俺様キューピッド
ぽっちゃりキューピッド
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「…あれ、ハル。ちょっと痩せた?」
「は、え?」
いつものようにお腹をぷにぷにしながら、村田さんはそんなことを言ってくる。
「ちょっとだけど身長も伸びた気がするし……、もしかして第二次成長期か?」
頭を抱えるふりをしながら『俺のハルが大人になってしまう!』とかそんなよくわからないことを言って、その場でいつまでも身もだえていた。
こんなとこも村田さんに似ている東雲先輩は、僕の顔を見るたびに、村田さんと同じように僕に抱き着いてくる。
過剰なスキンシップを取りたがるところまで村田さんと似ていて、二人が兄弟だって噂があるくらいだ。
東雲先輩の場合は愉快犯の疑いが強くて、生徒会メンバー、特に生徒会長の岳先輩と副会長の葉先輩の前でそんな態度で、二人をからかっているんだと思う。
それは風紀委員は生徒会執行部をライバル視してるみたいだからなんだけど、東雲先輩の態度を見ていたら、二人を尊敬しているのも手に取るようにわかるんだよね。
いつものように草むしりをしながら、ずっとそんなことを考える。
少し前は頭の中が龍平のことでいっぱいだったことも、すごく昔のことのように思えた。
「やっぱり恋ってすごいなあ……」
あ、なんか口癖みたいになっちゃった。
自分が言った独り言に恥ずかしくなって、思わず辺りを見回したら、
「あ」
いつものテラスのテーブルに葉先輩がいた。
先輩は紅茶を飲みながら軽く僕の方に手を振って、僕は小さく会釈で返した。
なんでかな。
葉先輩の顔を見るのも恥ずかしい。
多分、葉先輩は全部知っているからだと思う。
「…あ」
草を抜いてる手が止まる。
僕、いま大変なことに気付いてしまった。
鼻をつく草と土のにおい。
指先からじんわり感じる土の温もり。
やっぱりこうやって土をいじってると、とても落ち着く。
気付いてしまったこと。
それは葉先輩と会っただけでこんなに恥ずかしいのに、どんな顔をして岳先輩に会えばいいかってこと。
昨日、あんなキスをしちゃったから恥ずかしくて仕方ない。
先輩にはすごく会いたいのに、今すぐにでも会いたいのに、どんな顔をして会ったらいいのかがわからない。
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