俺様キューピッド
ぽっちゃりキューピッド

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まさか先輩が僕のことを好いてくれてるとは思わなかったから、中途半端な態度を取ってしまった。
葉先輩から岳先輩を解放して欲しいって言われたけど、岳先輩を追うことはやめられなかったし。

葉先輩は僕と龍平の関係で言うと僕の立場だから、すごく複雑だと思う。
葉先輩には岳先輩のことで相談にも乗ってもらったし、ちゃんとお礼も言わなきゃ。


中途半端で曖昧だった岳先輩との関係が、昨日の出来事で一変してしまった。
悪い方向にじゃなくていい方向だけど、昨日の僕と今日の僕とは全く違う。

それがホントに信じられなくて、まるで夢の中にいるようだ。何度も何度も頬っぺたを抓ってみたり髪を引っ張ってみたけど、

「…いゃっぱひ、いひゃい……」

じわじわ感じる地味な痛みが嘘じゃないことを教えてくれた。



午前7時。
しばらくそうしていて、春川くんの気配が消えてからキッチンに向かう。
龍平のために、朝食とお弁当を用意している春川くんを見て見ぬふりをするのが日課になった。

春川くんの姿がないのを確認して、まずは春川くんがシンクに残したままの洗い物を済ませてしまい、それから自分の朝食とお弁当を用意する。
今までは龍平のために用意していた朝食とお弁当。
いつか岳先輩に作ってあげたい。


身支度を済ませて部屋を出た。
登校前に花壇に寄って、水やりと簡単な手入れを済ませて教室に向かう。
正規の役員の先輩たちや龍平とは違い、補佐役の僕は登校前に生徒会室には寄らない。
必ず岳先輩がいるのがわかってるから、寄ってみたい気持ちもあるけど、先輩の邪魔はしたくないし、みんなの役に立つことしかしたくない。

取り敢えずお弁当にも入れた稲荷寿しを多めに用意して、少し大きめのタッパーに詰めた。
今日の差し入れは、これに決定。
最近はごたごたしていてお菓子なんかも作ってなかったし、お茶うけにもなる焼き菓子も焼いておきたいところだけど。

うじうじしていた最近の僕は、もうどこにもいない。
恋って偉大だ。
こんな僕を気分まで幸せにしてくれる。


この時の僕は浮かれていて、僕の幸せの陰で泣いてる誰かがいることに気付けなかった。

Bkmする
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