俺様キューピッド
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一瞬、心臓が止まってしまったような気がした。
やっぱり、僕、先輩に迷惑をかけていたんだ。
どうやらそれが顔に出てたみたいで、
「こら晴陽。勘違いするなよ」
そう言いながら先輩は、僕の頬をぐにゅっと掴む。
「悪いけど、もうおまえの恋の橋渡し役(キューピッド)はできない」
その手が僕の頬を包み込むように顔に触れて、
「晴陽と誰かがくっつくのを指を咥えて見てるなんてできるかよ…」
ゆっくりと輪郭をなぞる。
そのまま軽く上を向かされて、真正面に先輩の顔。
鼻先、数センチ。
その距離が縮まって、お互いの鼻の先っぽが触れた。
壊れそうな胸の鼓動。
意外なことに先輩もそうだった。
触れた手から伝わるそれが、更に距離を縮ませて、お互いの唇がそっと触れる。
恋のキューピッドはもういらない。
こうして大切な人を手に入れたから。
このキスの意味は、僕にはわからないけれど、大好きな人は、確かにここにいる。
一つに重なったでこぼこな影。
その影が再び離れるのは、もう少し先のことになりそうだ。
ありがとうございました。
あとがき
2011/04/03/完結
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