雨宿り


「よく降りますね」
「…だな」

わんこと映画を見に行った帰り、見事に雨に降られてしまった。

まあ、先週から梅雨入りしたし、雨が降ることは想定内だ。
だから俺はわんことの相合い傘を想定して、わざと傘を持って行かなかった。

『はあ?おまっ、傘持ってねえの?』
『えっ、いや、だって…』
『はあ…使えねえやつ』
『ううっ』

そしたらわんこも持ってなくて、雨が降り出してからその事実に気付く。

「普通は折りたたみ傘でも持ってるだろ」
「そう言う先輩こそ」
「…なんか言ったか?」
「あ、いや、なんもっ」

目の前にはコンビニがある。
このままコンビニに寄って、ビニール傘を一本、買ってもいいけど。




「…なかなかやみませんね」
「ああ」

小さな雑貨屋の軒下を借りて、わんこと二人、雨宿り。
傘の中とあまり変わらないぐらいに身を寄せ合って、言葉少なに空を見上げる。

映画も観終わり、夕飯も食べて、あとは帰るだけだった。
だから今、コンビニで傘を買ってしまうと、その…な。




わんこもわざと傘を持ってなかったことに、気付くのはもう少し後のお話。


2015年6月



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