こういうのを母性本能とでも言うのだろうか

いや待て待て待て待て同い年相手にそれはおかしいし第一に俺は男だ。もうわけわかんねえなんだよこれハハハハ笑えてくるぜ。
真顔で腹を押さえながらふと視線を上げると例のあいつとバチッと目が合う。あっ逸らされた。

雷門との合同合宿。何故合同で合宿をやらなければならないのか。しかも相手はよりにもよって雷門とか監督は一体何を考えているんだ。
そんなチームの雰囲気を感じ取ったのか(はたまた持ち前の責任感に負われたのか)キャプテンである貴志部が代表して監督にその思いをぶつけた。返ってきた言葉はこうだ。

「円堂くんの提案だからね」

円堂…って雷門の監督の円堂守かよ。監督はにっこり笑って練習に戻れと言い放つ。相変わらず謎の多い人だ。以前円堂教とかいう都市伝説を聞いたことがあるが…まさかな。


そして合宿一日目。初っぱなから練習試合をすることになった。朝イチの試合もまあ斬新で別にいいんじゃないかと思う反面で俺はどこかでワクワクしていた。

雷門の、フォワードの、11番の、あの片目チビ。あいつがくそかわいくて仕方がないのだ。

我ながらドン引きである。去年の決勝でも今年のホーリーロードでもあの生意気な鬼太郎野郎のことは引っ掛かっていた。そしてそれに拍車をかける出来事が一つ。
あいつが俺と喋ると必然的に上目遣いになるのだ。

もちろんそれは俺だけじゃないしむしろあの鬼太郎ほとんどの奴に対して上目遣いなのではないだろうか。しかしそれはかなりポイントが高いことであるのには変わりない。少し妬ける気もするが。

先に言っておくと、俺は断じてブラコンではないし俗に言うロリコンでも全くない、ましてやショタコンなどまっぴらごめんだ。
しかし背の低い奴に惹かれるのも確か。特にこの鬼太郎…倉間なんかかわいすぎて本当どうしようもない。出来ることなら今すぐ抱きついて頭を撫でたいところだがそんなことをしては殺されるのがオチだ。今はまだ指をくわえて見ているしかない。
倉間がボールをぽんぽんと蹴って追いかけてるのを見ながら込み上げてくる生理的な笑みを必死に噛み殺していたら快彦のバカ野郎に「兄さんキモい」と吐き捨てられ取っ組み合いに発展した。それからも倉間にばっか気をとられていつもよりミス出すし快彦くそ野郎に嫌味言われるし貴志部に無駄に心配されるし監督やみんなからはなんか含んだ微笑み向けられるし。一日なんかあっという間に過ぎてしまった。
まあつまり結論的に言うと、

「滝、それ俺の箸」

俺はこの三日間、理性がちゃんと持ってくれるかとてつもなく不安なのだ。

しまった、これ初恋じゃね


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