先に泣くのはいつも決まって俺だった。霧野が泣いてるところを見たのなんて片手で数えられるくらいしかないし、そもそも霧野は人前で泣かない。では何故俺が霧野の泣いてる姿を見たことがあるのかと言うと、答えは簡単だ。俺が泣かせた。

正直俺も霧野も小さかったから理由も当時の状況も覚えていない。ただ思い出せることといえば、霧野の涙がきれいだったことだ。青い瞳から落ちる透明な液体はそれはそれはきれいで。幼心ながらに見惚れていた気がする。

それから俺はたまに、本当にごくたまに霧野を故意に困らせては泣かせていた。俺は霧野が喜んだり感動したりして流す涙よりも、俺の手によって無理矢理流させられる涙のほうがすきなのだ。だって霧野が今泣いているのは紛れもなく俺のためで、俺のせいで今霧野は泣いている。そうだろう?なんて素晴らしいことなんだ。でも俺はみんなから弱虫泣き虫と後ろ指を指される神童拓人だから。頻繁にそんな真似をすることはできない。だから希少価値のある霧野の涙を拝見出来たとき俺は逆にその感動からついつい涙を流してしまうのだ。

涙の海に溺れてしまいたい


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