こいつは正義感が強すぎるから。馬鹿みたいに真面目だから。自分の運命を当たり前のように受け止め、そして従う。苦しいなら抗えばいいのに。全て投げ出せばいいのに。お前の人生はお前のものだ。誰からも遮られることなくただ自由に生きてほしい、それだけなのに。お前は優しいから。かなしいくらい優しいから。自分自身を犠牲にしてまで世の中のために尽くすんだね。

「俺は君のそういうところ嫌いだよ」

またそうやって相変わらずの無表情で俺の目を見る。いや、もしかして覗いてるのかな。こんなちんけなガラス玉を通して何か見えたかい?なあアルファ、黙ってるだけじゃ伝わらないよ。

「お前は深刻なエラー。エラーは修正されるべきだ」

そうだね。俺は本当の俺じゃない。本当の俺は足が不自由でサッカーが出来ない。でも俺も俺なんだよ。俺だって今を生きてる剣城優一なんだ。

「君はそれでいいのか」

必要以上に姿勢を崩さないで静かに佇む姿はまるでお人形のようだよ。政府のお人形として生きていくなんてそんなかなしい人生があるか。

「アルファ」

俺と行こう。対立もセカンドチルドレンもない世界へ。そこはきっとすてきなところだよ。

名前の無い真っ白な世界でふたりきり


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