もう暦の上では春だというのにキンと冷え込みの激しい室内では風呂で身体をあたためたばかりにも関わらず冷えたフローリングによって爪先から体温が部屋に溶け込んでしまう。こういう日は早々に布団にもぐりこんでしまいたいものなのだが。
「それであいつら馬鹿のくせして自慢話ばっかしてんだぜ見てるこっちが恥ずかしいっての、ねえ、聞いてんの、剣城、くん!」
「ーッ、」
ジクリと鈍い痛みが肩口から響いてくる。狩屋の犬歯が突き刺さる感触だ。またはじまった。これでは寝るどころじゃないではないか。
狩屋に噛み癖があると気付いたのは何時だったか。付き合い始めた当初はそんなことなかったはずだ。初めてセックスをした時はお互いいっぱいいっぱいだったのもあり記憶に無い。が、初っぱなから噛まれるようなことは無かったような。ただ付き合って一年経つ頃には容赦なくガブリと噛まれることにも慣れた。はっきりとした境界線の印象が残っておらず曖昧でうやむやなあたり、自分が噛まれることに対しそこまで嫌悪も関心も無いということが伺えるが別に痛いのが好きとかいうマゾヒスト的思考は持ち合わせていないから鏡で肉の抉れた肩や首を見るたびに顔をしかめるはめになる。しかし止めろと言ったところでこいつが素直に従うとは思えない。いやそれ以前に本能的動物的に噛んでくるように見えるこいつは「止めろ」「え、何を?」と返してきてもおかしくないほどだ。束縛や独占欲、所有物の印の象徴としてキスマークや引っ掻き傷、噛み跡を残すといった話はよく耳にするがこいつの癖はそんな可愛いもんじゃない気がする。なら何だと尋ねられたらうまい言葉が見当たらないあたりどうしようもない。
一通り愚痴を吐き出し終わってスッキリしたのか猫のように伸びをしながらくあっと欠伸をひとつ。「あーもう、やだやだ。寒いね剣城くん。さっさと寝よ。」悪怯れる様子もなく我先にと布団にもぐりこむこいつに何か報復をと考えながら後を追い、少しだが温まっていた布団の中で抱き締めながらなんとなく鼻をあまがみしてみれば目を真ん丸にして口をぱくぱく。予想外な好い反応についつい気分がよくなり首にもがぶり。「いつもの仕返しだ。」今日新しく出来た肩口の歯形をなぞりながら告げれば
「っ、噛、んでいーの、は、お、おれだけ、だっつの!」
はいはいそうですかそうですか。どうやら噛まれることが苦手なようで、弱点をまたひとつ掴んだぞと口元がにやける。そのまますっかり何処へか消えてしまった眠気を呼び戻すためにまだ頬に熱を持つ狩屋の鎖骨に噛み付いた。







あむみやに捧げます遅くなってごめんねウォンウォン相当な京マサ狂である君が満足できるかどうかは分かんないけど噛み癖狩屋の素晴らしさ伝わリーヨ!!!
直リンクOKだよあむみやだけお持ち帰りフリーですんすん


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