目が冴えた。
もはや暗闇に慣れた目をぱちぱちと瞬きする。時刻は夜中の2時。

珍しく瞳子さんがお泊まりをオッケーしてくれたから気が昂ったのかもしれない。狩屋はのそのそと上半身を起こし自分の右側に視線を落とす。剣城はすうすうと規則正しい寝息を立てていた。

(俺は寝れないっつーのに)

体育座りして頬杖をつく。下ろした黒い髪が白い肌によく似合ってすごくきれいだ。整った顔してるし背ぇ高いしうわ睫毛長っ!新しい発見がなんだか楽しくなってきた狩屋は剣城の枕元へ移動しまじまじとその寝顔を見詰める。凛々しい眉とかすっと通った鼻筋とか薄く淡い色をした唇とか普段あまり見る機会が無いためか夢中になって観察した。

(あーなんかキスしたい)

でもなんか寝込み襲ってるみたいでやだなあ。でもキスしたいなあ。うーでもなあ。

「……まあ…剣城くん寝てるし、」大丈夫だよね。誰かさんの言葉を借りると、案ずるより産むが易し。剣城の顔に自分の顔を近づける。自分からキスすることは何回かあったがこういう風に一方的なキスは何しろ初めてだった狩屋はぎこちなく、それはもうぎこちなく剣城の唇に自分の唇を当てた。柔らかいなあと頭のどこかで思った。

しかし次の瞬間、狩屋の視界がぐるりと反転した。驚く暇も無く何度も角度を変えながら唇を塞がれる。やっと解放された時にはぜえぜえと息が上がっていた。

「いっ…いつから起きてたんだよ!」
「『まあ剣城くん寝てるし…』のところから」
「死にてえ…」

狩屋は頭を抱えてその場で縮まる。ちなみに未だ剣城に組み敷かれたままだ。

「まさか本当に寝込みにキスされるとは思ってなかったけどな」
「もうやめてください…」
「下手すぎて実は内心笑ってた」
「てめえケンカ売ってんのか」
「…まあ、可愛かった」

途端に「ば、ばっかじゃねーの!おやすみ!」林檎みたいに顔を真っ赤にして慌てて布団を頭まですっぽりと被る狩屋を見て剣城は人知れず思った。

(女子か…)



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テーマ「人外ファンタジー」
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