霧野先輩はずるい。最初こそ俺が優勢だと思っていたのに気付けばいつの間にか立場が逆転していたし。いつだって俺の少し前を行ってしまうこのピンク色の頭が、どこか広く感じられる背中が、明るい笑顔が憎たらしくて仕方なかった。

「お前ってほんと手のかかる奴だったよなあ」

 さあさあと柔らかく風が吹く中、雷門中学校へ向かって淡々と歩きながら霧野先輩が振り返る。眉を少し下げて困ったように呆れたように笑ってそう言われ俺はちょっとだけムッとしたが表には出さずに「そうでしたっけ〜」とだけ言った。

「そうだったろ。やたら俺に突っ掛かって振り回してさ。今考えたら狩屋って昔から俺のこと大好きだよな」
「何言ってるんですか先輩ついに頭イカれたんじゃないですか精神科行け」
「とか言いつつもしっかり照れてくれてありがとな」

 頭をぽんぽんと叩かれた悔しい。別に過去のことを否定するつもりはない。意味こそ最初とは少し違ってきているのかもしれないが俺は霧野先輩がすきだ。まあそんなこと言ったら確実に調子乗るから口が割けても言わないけど。
 空には雲一つなくて明るい水色が広がっている。ここに一滴の墨汁を垂らしたらどうなるだろう。きっとそこから黒が広がって水色と混ざり汚い色が生まれるんだろうなあ、なんて。何考えてるんだろう。ばかばかしくなってやめた。
 霧野先輩を見た。俺よりもずっと背が高くてむかつく。俺にはこれから成長期が来て霧野先輩なんか越えてやるんだ。そうしたら今度は俺が先輩を押し倒して、先輩が今まで俺にやったことを先輩にもやる。…前に言ったら盛大に笑われたことを思い出した。なんだかなあ。と、その時急にこちらを向いた霧野先輩と目が合った。少し焦った。

「狩屋?」

 透き通った水色の目が俺の目を覗き込む。それがなんだかくすぐったくて「なんでもねーよ」とその場から走り出すと霧野先輩も追いかけてくる。

「競争なら負けないぞ!」

 小学生かよ、と内心爆笑しながら結局ムキなったのは俺も同じで、そのまま朝の街道を駆け抜けた。

「狩屋っ!」
「なんですか!」
「好きだ!」
「知ってますよバーカ!」





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大遅刻………
遅くなってごめんね!篠宮誕生日おめでとう!



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