医者から激しい運動を禁止されている。仮にやったとしてもすぐ息切れしてしまうしロクに体も動かせられない。サッカー選手としてどうかと思うけどサッカーが好きな気持ちなら誰にも負けないしそんなのすぐに克服してやるって思ってた。


「何の真似だ」
「剣城くんとエッチする」
「お前…人の話聞いてたのか」

今の僕はセックスしたら病気が悪化するらしい。直接的にじゃないけど、身体に負担がかかって弱って結果的に病気の悪化を促進させる。どこまでも思い通りにならない体だ。

剣城くんをベッドに押し倒してその上に馬乗りに跨がると「コイツ正気か」みたいな顔をされた。僕はいつだって真剣だよ剣城くん。頬を一撫でして服に手をかけると腕をがしっと掴まれ僕を睨み上げる目と目が合った。彼の目はいつだって静かで感情がよく分からないけど今の目からは面白いくらいに彼の内側が伝わってくる。ねえ剣城くん、僕のために心配してくれてるの?

「お前死ぬぞ」
「簡単には死なないよ」
「死んだらどうするんだ」
「死なないって」
「雨宮、」
「平気だって言ってるだろ!」

声を張り上げるとハッとした剣城くんの僕の腕を掴む力が弱まった。勢いよくそれを振り落としてまた服に手をかけ脱がせていく。一気に大人しくなった剣城くんは何かを目で訴えてくるけど一切抵抗はしなかった。それがなんだかむしゃくしゃして上半身に何も纏っていない身体をきつく抱き締めてその首筋に噛みついた。剣城くん、分かるだろ、好きなんだ。剣城くんが好き。きみも知ってるんだろ。僕このままだともうすぐ死んじゃうって。どうせ死んじゃうならやりたいことやっておきたいんだ。未練残して君の背後霊になるよりマシだろ?ねえ剣城くん、本当にきみが大好きなんだ。

「なんで泣いてんだよ」

うるさい。泣いてない。なんだか頭がぼうっとして息が苦しい。身体が熱い。苦しい。今にもぶっ飛びそうな意識をなんとか保ちながら僕の下にいる剣城くんを目に焼き付ける。乱れた髪とか赤い模様がたくさんついた色白な肌とか潤んだ瞳とか熱い吐息とか剣城くんのそれとか頭のてっぺんから足の爪の先まで全部全部全部。

「だいすきだよ」

意識が途切れる直前。最後に見た大好きな人の顔。ねえ、どうしてきみまで泣いてるの?



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