くるくる、と細長い指が桃色の髪を弄ぶ。それがうざったくて霧野が軽く頭を振ると指はすぐにパッと離れた。「ごめんごめん綺麗だったから、つい」反省しているのかしていないのかふわりと微笑みながら眉尻を下げる雛乃の口からこの言葉を聞くのはもう何度目だろう。
 雛乃は美しさを求める。それはサッカーのプレーから性癖にまで及ぶ。確かに雛乃のプレーは美しい。優雅で気品があって敵味方の選手も観客もを魅了する。たまに自分でも酔いしれているらしいけれど。そんな雛乃は同じく美しさを金揃えた霧野に見事惚れ込んでしまったのだ。
 霧野と言えば、その美貌や容姿から女子に間違われることが幾度となくある。最近は慣れたと思っていたのだがこないだ街中で「かわいいね、彼氏いるの?」なんて声を掛けられた時そいつをぶん殴りはしなかったものの顔がかなりひきつった。しかし雛乃に「綺麗」「美しい」「素敵」などと言われても別に殴りたくはならない。うざいし男がかわいいなんて言われても嬉しくないしただひたすらうざいけど。でも雛乃からは本気というか本心から素直にそう言っているのが分かる。だから雛乃から綺麗だと言われるのは嫌いじゃない。

「雛乃」
「なに?」
「お前って本当俺のこと好きだよな」

 一瞬まつげの長い大きな目をぱちくりさせたかと思えばすぐ上品に笑って「好きだよ」と形のいい唇がそう紡いだ。

「好き。君の顔も目も髪も肌も腕も足も声も性格も、頭のてっぺんから爪先まで全部が好きだ」
「気持ち悪い」
「何とでも言ってよ」
「俺はお前のそういうとこ好き」

本音でぶつかってきてくれるから、と付け加えたかった言葉は突然唇を塞がれたことによって霧野の喉に飲み込まれた。このままだとなんか勘違いされそうだから言っておくが俺は気持ち悪い雛乃が好きなんじゃない、素直な雛乃が好きなんだ。

はあ、と息を漏らしながら離れた雛乃が金糸の髪をかきあげながら「大好き!」と抱きついてきた。「離れろナルシスト」そう言いながらも霧野は笑っている。



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