音を立てて扉が開いた。ベッドに寝っ転がりながらサッカーボールで遊んでいた足を止めて起き上がる。

「剣城くん!」
「お前…寝てろよ」

大きく手を振る僕に剣城くんが呆れたような顔で言う。だって、これ以上寝てたら首が寝違える。
 ベッドから飛び降りて剣城くんに駆け寄るとおでこをピシッと弾かれた。じわじわ痛む額を撫でながら睨むと素知らぬ顔で「前にお前が食べたいって言ってたやつ買ってきたぞ」と言ってベッドの縁に腰を下ろす。それだけで僕の機嫌が直ることを知ってるんだろう。

「あっおいしい」
「サッカー部の奴が絶賛してたからな」
「雷門にもケーキ好きな人いるんだ」
「ああ」

 剣城くんから雷門サッカー部の話聞くのは珍しい。最近気づいたことだけど、サッカー部を語る時の剣城くんの眼差しが優しくなったように思う。きっと本人はそんなつもりないんだろうけどね。そんな微妙な変化すら嬉しくて目の前の苺が乗ったケーキを食べ進めるスピードが上がってしまう。

「きみは食べないの?」
「いらねえ」
「もったいないなーおいしいのに」
「全部お前にやる」
「一口食べてみなよ」
「いらねえって」

 一口サイズに切ったケーキをフォークに刺してほれほれと剣城くんの口元に近付ける。ちなみに僕は彼が甘いもの苦手なのを知っている。「あーん」と口を開けるように促しても剣城くんは真一文字に口を結んだままだ。
 結局そのケーキは僕の口へと逆戻りした。その時。剣城くんの腕がスッと伸びてきて僕の頭を固定しフォークを持った右手はもう片方の剣城の手によって口に入れられる前に掴まれた。動けずにいると唇にやわらかいものが当たった。そのまま中を抉じ開け舌で歯列をなぞられる。なにこれ、もしかして僕いまキスされてる?息苦しくなってきたところで剣城くんがパッと離れた。

 一瞬で起こった現状にポカンとしているとあと一センチという距離にいる剣城くんがフンと軽く笑う。

「甘ったるいな」

きみの方がよっぽど甘いわ。言ってやろうかとも思ったけど僕も「確かに」とだけつぶやいて小さく笑った。



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