何度声をかけてもぴくりとも動かない、瞼を閉じたままの横顔があまりにも綺麗だったから死んでしまったのではないかと不安になった。頬に手を添えると、ああ良かった、温かい。
しかしこれで何度目になるのだろう。こうして狩屋に触れては心臓が動いているのを確認する。夜になると不安で不安で仕方なくて、毎日会いに来ては狩屋を感じ安心する。いつまでこんなことが続くんだろうか。

「…狩屋、」

たくさんお前の名前を呼んだからもう枯れてきたんだぞ。掠れる声でもう一度目の前の眠ったままの恋人の名前を呼んだ。声に出された言葉は一瞬で消えてなくなってしまう。真っ白な病室に吸い込まれてそのまま俺以外の誰にも聞かれることがなく死んでしまった。なあ狩屋。どうして笑ってくれないんだよ。なんで「剣城くん」って俺を呼んでくれないんだよ。いつもいつも、お前を呼ぶのは俺ばっかりで。

「早く目ぇ覚ませよ」

握った狩屋の手は冷たくて思わず背筋がぞっとした。狩屋、いつまで待たせるんだよ。俺にだって限界があるんだ。そうだな、お前が起きたらまず最初にぶん殴って罵倒して、それから抱きしめてキスして頭を撫でて、おかえりって言ってやるよ。だから、だから狩屋、早く目を覚ましてくれ。

冷えきった手を強く握ると一瞬だけ握り返されたような気がした。


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