「ただいま」
アフロディくんの声だ。ぱたぱたと玄関へ駆けていき満面の笑顔で「おかえりなさい」と言うとアフロディくんは優しい顔でわたしの頭を撫でる。わたしはアフロディくんに頭を撫でてもらうのが好きだ。そう、10年経った今でも。だって落ち着くの。一緒に夕食を食べながら今日の木戸川イレブンの様子について尋ねたら「いい方向に向かってるよ」ですって。よかった。雷門との試合がますます楽しみになった。
「アフロディくん、」
「ねえ冬花。今更だけど、僕たちは夫婦だよね?」
「何言ってるの当たり前じゃない」
「じゃあどうして名前で呼んでくれないんだい?」
どうしてって、あなたはアフロディでしょ?そう言うとアフロディくんは小さくため息をついて呆れた目をわたしに向けた。なによその顔は。
「確かに僕はアフロディだ。でもね、亜風炉照美という名前もちゃんとあるんだよ」
「知ってるよ。だけどあなたはアフロディ。あなたが自分でそう言ったんじゃない」
アフロディくんが珍しくぽかんとした顔になった。わたし何か変なこと言ったかしら。また呆れた目をされるのかと思えば今度は笑いだした。つくづく変な人。
「分かった。じゃあ冬花、これから僕のことは照美って呼んでくれないか」
にこり、というスマイル付き。今までずっとアフロディくんって呼んでたのに突然照美だなんて。でもそんな突拍子なところもアフロディくんらしいといえばそうなんだけどね。仕方ないから乗ってあげる。
「分かったわ。照美くん」
「うーん…まあ今はそれでいいや」


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