ありふれた風景、夕焼けが水面でゆらゆらとしていた。ぼんやりとした表情で、少年がふたり、河原に座っている。

「きれいだね」
緑の子が呟いた。夕日がこんなにきらきらしている日はあまりない。茶色の子、緑の子より頭一つ分小さい彼は、「珍しいな、お前がそんな事いうの」と言った。

「またこうして日没を眺めたいなあ」
と、緑の子。明日になったらまた見れるよ、茶色の子は言った。
緑の子はふるふると首を横に振り、「独りじゃつまらないよ。君と眺めたい」
「なんで」

「君は男だ。いつか女のヒトを好きになる。で、結婚して、また夕焼けを眺めに来るんだ。その時隣にいるのはボクじゃない。別の、誰か…」
緑の子は悲しそうに俯いた。きれいな顔。の輪郭を、逆光が縁取る。
「ぶっ……うぶぶぶぶ…」
茶色の子は吹き出した。びっくりしたのかはっ、とそちらにむき直し、何で笑うの、とむくれた。

「俺がお前を捨てると思ったか」
茶色の子はさっきの表情とは大違い、鋭い眼差しで緑の子を睨んだ。鳶色の眼が、ぎらり。
「俺がお前を捨てたらお前には誰がいる。まず誰もいない。だからお前は俺の隣にいていいんだ。俺は結婚なんてしない、彼女もいらない、お前と一緒に年取って、死ぬんだ」
「君は子供が欲しくないのかい?」
驚く緑の子。
「子供なんか、めんどくさい。お前だけでもう面倒なのにこれ以上めんどくさいのを増やしてどうすんだっつーの」

そう言うと茶色の子はバシッと緑の子の背中を叩いた。いたいっ、緑の子はわめく。

「夕日なんてさ、俺とお前で、何度でも見に来ればいいだろ」
「ずっと…かい?」
「ったりめーだ。おっさんになっても、お爺さんになっても、一緒に見に来ればいいだろ」

照れくさそうに、ずい、と茶色の子は小指を緑の子に近づけた。指切りげんまんだね。緑の子は嬉しそうに、小指を絡ます。

俺は おっさんになってもお爺さんになっても こいつと一緒にいてやると約束します、
ゆーびきーりげーんまーん嘘ついたら針千本のーます、指きった。

「……約束だよ」
「男と男の約束だ、破ったりなんかしない、よ」

約束しましょう


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