気付いて欲しくて | ナノ





四時間目が終わろうとした頃合いを見計らってなのか携帯のバイブ音が鳴る。
ブーブーと、授業中の静かな教室に似つかわしくない音が鳴ってしまい、教師やらクラスメイトなどに視線を向けられる。全く、こんな中途半端な時間にメールを送ってくるなと怒る気持ちとなんとも言えない嬉しさを感じた。

普段は、何かと突っ掛かって嫌味ばかりしか言えへん先輩もこのときばかりは、うざったさを感じない。アホな先輩を華麗にスルーした後に、三年二組へと行く。教室の扉は開いていたので、窓側に寝そべっている謙也さんの方へ向かう。途中、部長には軽い会釈をして通りすぎる。

「なに寝とんねん。はよ、起きて下さいよ」

狸寝入りなのは知っていた。だから、普段通りの口調で起き上がることを促す。全く、構って欲しいならちゃんと口で言えやヘタレと暴言を吐いた後に、自分も人のことを言えないなと考え直す。

「ひーかーるー、今日な白石が宿題見せてくれへんのや、ごっつ怖い先生やのに。このまんまじゃ光とテニス出来へん…放課後残されてまうわ、」

この人が馬鹿だということは、言わずもがな知っていたこと。だとしてもテニスにまでに支障を出して欲しくはなかった。自分は、テニスに支障を出してまうほど、馬鹿なことはしていない。提出物は期限通りに出しているし、テストの点数も平均点以上、宿題も必ずやっている、それも全ては謙也さんとテニスをするためだというのに、謙也さんは何もわかってへんかったっていうことやな、なんて考えていればテンションは下がってしまう訳で、この場を離れる方法へ出た。

「頑張って下さい…ほな」
あんたは、俺を救ってくれたけど、俺の気持ちはわからへんのや。とはおもいながらも可哀想なので部長に見せてやって下さいと頼んだ。

*
あんたとテニスがしたいから/1103
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -