嫌いでも好きでもない | ナノ






新しいヘッドホンを目当てに休日外へと出掛ければ、行き付けのショップに忍足先輩がいた。あの人の聞く曲はきっとテンポが早いリズミカルな曲なんやろなと考えていれば、こちらに気付いたのか忍足先輩は、笑いながら手を振ってくる。軽く会釈をしてこの場から立ち去ろうとすれば、腕を捕まれてしまい動くことが不可能だった。なんや、離せや。とは思いつつも相手は一応、部活の先輩なので悪くはできなかった。この人は誰にでも優しくて馴れ馴れしいから自分は苦手だった。嫌いというほどその人のことは知っていないし、無関心に近かった。

「買い物か、財前。」

まあ、妥当な話し掛け方やなと思いながら、首を縦に振る。無口だということは、知っているはずだから会話なんてしなくていい。

「もうすぐ昼なんやけど、腹空いとるなら一緒にお昼でも食わへん?」

「別にいいっすけど、俺なんかと食べても楽しないですよ、」

相手は、知っているだろうが、誘った後に後悔をさせたくないので、釘をさしておく。そしたら一瞬罰の悪い表情をしてからいつも通りの笑顔にしてから俺の頭を撫でた。

「そんなん、食べてみなきゃわからへん。財前は、きっと人見知りなだけやと思うねん、人に気い使えるやつっぽいしな」

「そ、そんなんとちゃいます。ええから、昼飯食べにいきましょ。」

もうこんな立ち話無駄やなと思い早くお昼が食べたいと促す。

「はは、財前はクルー言われてんけど、実際は照れ屋でかわええな」

だまれ、あんたは俺の何を知っとんねんと思いつつも撫でられている手を振り払うことはできなかった。あんた、優しすぎて怖すぎるんや、この優しさに慣れてしまったら恐怖やなと他人事のように思った。






嫌いでも好きでもない/1018
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