あなたの空模様 | ナノ




空が見たい向こうの空がみたい。自分の瞳に映る空ではなくて他の人の瞳に映るであろう空。たとえば、俺は全ての空が同様に見えて、雨の日も晴れの日も同じように見えてしまう人やったとしよう、他の人は、全てが眩しい空に見えるんや。眩しくて神々しくて、全てが均等な雲な形で誰にも負けない雲の流れに見えるんや 。そんな空が俺は見たい。
決して楽しくない俺の人生も変われる気がする。そんなん俺の気分なんねんけど。
あのひとに、そう言ったらどんな反応されるんかなとかまだ友達とかとメールしてるんかな、とか気になって仕方なかった。
ベッドに横になってもあの人の顔しか浮かんでへんかったから、少し外の風にあたろうかと思いベランダに出る。夏やというのに、肌寒い風やった。
それでも、その風があの人の走った後みたいやったなとか馬鹿なことを考えてしもうた俺は、末期や末期。
「おーい、光!ベランダに出てどうしたん?」

「っ、何で居るんすか」

居った、それはそれは、大層な笑顔を見せてランニングしていた。もう陸上部の域やないかと思いつつ、目前にいる謙也さんを見て笑った。

「なんや、汗だくやないすか。俺の部屋涼しいすよ?」

「こんな夜に邪魔やん。後日でもええ?」

謙也さんは、鈍感だから俺がせっかく誘っているのに気付かない。アホややっぱりアホやった。

「もういいっすわ…アホひよこ頭」

「おまっ!それはないやろ。わーったわ、光が良いって言うなら上がらせてもらうで、はよ開けてや」

なんてちょろい人なんやろかと思いながら自分の部屋から出て階段を下り玄関先へと向かう。かちゃっと鍵を開けてドアのぶに手を掛ければ、謙也さんが勝手に開けて来たため、重心が謙也さんの方に行き抱きつく形となってしまった。スピードスターだろうがもっと待つことを覚えて欲しいとさえ思った。

「おお、大丈夫か?光、体温低いな」

「…冷房ガンガンっすわ。」

お邪魔しますと一礼してから靴を脱ぎ左右を綺麗に揃えてから俺についてくる謙也さんには、育ちの良さを感じさせるものがあった。
「光ー、めっちゃ寒いでこの部屋」

でかい声で叫ばなくても聞こえるのに五月蝿いと思いべしっと頭を叩く。

「これくらいがちょうど良いんすわ、それより何でこんな夜に走っとったんですか?」

「あー、んー…あれや、風になりたかったっちゅー話や!」

何かこの人の身にあったんだなということは見当がつく。普段から正直なので嘘をつくのも苦手な謙也さんは、嘘を言うとき人の顔を見ない、子供かなんて気付いた瞬間に思った。

「そっすか。じゃあ、俺が外に出てた理由でも教えてあげますわ」

なんて言いながら、謙也さんの悩みを聞こうとしている自分が酷いやつのように思えた。

「空が見たかったんです、ある人が見ている綺麗な眩しそうな空。雲の流れがはやそうな空。俺は、それが見たかったんすわ」

「なんや、光はそんな空が好きなんか?」

「はい、だって俺が見とる空は雨の日も晴れの日も同様に見えるんやから」

謙也さんの空が見たいとは直接言えなかった、もし言ってしまったら今のようにはなれない気がした。

「じゃあ、ほらおいで!」
部屋で座っていた謙也さんから、腕だけを伸ばしおいでと促される。恥ずかしいのも堪えて謙也さんの股の間に腰をおろした。

後ろから謙也さんの髪の匂いがふわっと香る。ブリーチで、傷んでみえがちな髪は実はふわふわでネコ毛で気持ち良い手触りだった。幸せに満たされた自分は、いつの間にか眠りについていた。その次の日の朝は、眩しく綺麗な快晴な空だったことを覚えてる。



あなたの空模様/0830
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