きっとどこかで貴方が | ナノ





愛なんてカタチには表せないことだと知っている。それでも、人間は愛を示して欲しいと願うんだ。強欲で傲慢な人間だから。

「愛ってなんだと思いますか?」

財前と忍足しか居ない部室で二人は黙々と別作業をしていた。
白石が何らかの用事があるらしいとのことで代わりに忍足が部活の日誌を書いているようだった。
財前はと言えば、自分のラケットを磨きながらオーディオプレイヤーで曲を聴いている。ふと、財前は思った。この前謙也さんとセックスをしている最中に『愛してんでえ、光』と言われた。そのときは、別にどうという感情は無かったのだが、思いだせば思いだすだけ気になってならない。
愛って何なんだろうなあと思う。積もる話は恋なんてしたことがない自分だから愛がわからないんだろう、人を好きになったことなんてこれまでになかった。それなのにいきなり愛しているなんて言われても財前には全く意味がわからなくなった。この気持ちも…財前には理解できなかった。
好きってなんなのだろう愛とはなに?

「急に何言い出すん?愛はあれやろ…あー、なんやろな」

「あんたが言っとったんですよ。」

仏頂面で返事をすると謙也さんはなにを思ったのかいきなり話し出す。

「あれやな、好きは同意がなくてもええと思うんや。愛とかまでいってまうとあれやな、責任がありそうな気がするねん…よお分からへんけどな。好きよりももっと上で一生護っていく覚悟が必要やと思うんや。恋人愛は、精神的に肉体的にも対象の価値を求める愛やし、友情愛は俺が自分の為でなく誰かの為に行動したとかそういうのやなんて思うん。何を言うてるか俺もわからんくなったから勘弁してな」

困った顔をしながら財前の方を見る。財前の後頭部に手のひらを当てぐいと自分の胸に抱き締める。俺は居るとずっと居るからと何故か泣きながら忍足は言う。
「あんたは…素直やない俺にも優しゅうしてくれるんやな。これからもいつまでもこんなムカつく言い方しか出来ないかもしんないっすよ?」

「何や光…光は、充分に素直な良い子やで?可愛らしくて照れ屋ででも生意気で…自慢の恋人やと思う、やからさ、顔を上げや」

自分から引き寄せて強く
抱きしめてきたくせに手のひらで強く頭を撫でている力を弱めてくれないくせに良く言うと心の中で吐いている、財前の瞳から涙がほろりと垂れる。

財前には一言がとても救われた気がした。『護る』こんな自分を生意気なことしか言わない俺を。思ってくれる、だから愛してくれると謙也さ、言った。

「…け、やさんっあいし、てます…わっ、」

泣きながら一つ一つ口に出していく。

大事にする、護る、責任これが俺らの愛の意味になった。


きっとどこかで貴方が/0821


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -