腹が痛いやら気持ちが悪いやらで全てがムカつく。
何なんだ、この症状は。今日食べた夜ごはんが全て出てきそうな感じがする。
だんだん頭痛もしてきて、苛立ちが増すばかり。
あれか、この前白石部長が気をつけろと言っていた症状なのだろうか。
あー、こういう時に謙也さんの顔が浮かんでくるのはあれだ、何なんだ。
そこまでして会いたくもない謙也さんの気配がする。
顔に誰かの息が掛っている気がする。いま、この家には自分しか居ない筈やのに。
「…っけんやさん?」
「おん?…あれー、起こしてもうたか、堪忍な。」
やっぱり居った。何で、俺の家にいるんだ。もう、腹痛で機嫌の悪さも増すばかりだ。
それでも、体力なんて自分には残っていないので、何も出来なかった。何で居るんや?とか言いたいことなんかいくらでもある。
「あ、光。薬飲んだ?」
謙也さんの顔がだんだんと近くなってくる。俺の顔を覗き込むこうな体勢で、謙也さんの方は疾しい気持ちなんぞは無い筈なのに、俺はキスしとうなった。
きっと鈍い謙也さんには、自分がキスしたいと思っていることなんて多分知らないだろう。本当、おめでたい人やな。
「飲んで、ないっす」
何で、そんな心配した顔をするんやろな。やめろや、何で…これだから病人になると変な感情が込み上げてくる。
「ほら、飲みい。」
水の入ったコップと風邪の薬を渡してきた。だから、何で謙也さんがわざわざ…なんて、そんなことを思ってもしょうがないと思い謙也さんに渡された薬を水で押し込めるようにがぶがぶと飲み込んだ。薬の味が本当に嫌や、気持ち悪うなった。それでも、お礼は一応言わなあかんしとも同時に思い、謙也さんにお礼を言う為 に身体を起こす。
「…ん。ありがとうございます、」
凄く自分で弱った声が出ていると思う。情けなくて嫌になる。
「なあ、光。苦しんでるところ悪いんやけど、キスしても良いか?」
同じことを思っていた謙也さんに、一言風邪うつしたるわと言いながら自分から謙也さんの唇へと押し付ける。
一瞬驚いた顔をしてから流されるように舌を入れてきた謙也さんに欲情したなんて言うたら最後までやってくれるんやろか。
風邪やから、/0811