目の前に座る彼女は曖昧な笑顔を浮かべている。確かに俺の質問は唐突すぎたような気がしないでもない(いや、明らかに唐突だろう)。けれどそうおもうことは事実であるし、気の利いたことばで質問できるほど女慣れしているわけではない。ただじっと曖昧にはにかんだ笑顔を見詰める俺に彼女は狼狽した瞳をみせた。


「して欲しい……こと?」
「うん」


また彼女は力なく笑った。その笑顔もかわいいとおもう俺はずいぶん彼女のことが好きなのだろう。
俺をずっと支え続けてくれている彼女へ返せたものは果してなんだっただろうか。与えてもらうばかりの愛情へ応えられたか否かを考えると疑問ばかりが残る。思考するばかりではなにも解決しないことを知った俺ができることは、彼女を狼狽させてでも感謝の意を示すことであった。

唸る彼女の姿に苦笑をもらした。元来欲というものを殆ど持ち合わせない彼女が瞳を泳がせるだろうことは承知していたが、まさかここまで悩むとは。小さな唸り声を上げ続ける彼女にふたたび愛情を募らせれていれば、歯切れの悪い口調が降ってくる。ふと視線を持ち上げると、手持ち無沙汰な様子で膝の上に置いた手をこねる彼女が映った。


「ギュッてして欲しい…かな?」


照れたように笑う彼女の顔が嫌に眩しかった。どこまでも控え目な小さな身体を腕のなかに納め、触れるだけのキスを繰り返す。突然の行為に困惑した声で俺の名を呼ぶ彼女がジタバタと暴れる。まるで抵抗にならない抵抗に頬を緩めながらこんな日々がいつまでも続けばいい。そうおもった。



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