3日に1回、オレの電話は決まった時間帯に鳴り響く。

「もしもし」
『こんばんは、不動』

携帯から聞こえる、特徴のある柔らかい声に、何だか少しホッとする。確かめるように耳にそれを擦り寄せて、耳にかかる髪を払った。

「…、こんばんは……」

最近はお決まりの挨拶なんだけど、未だに馴れなくてちょっと語尾が消えかける。照れてるなんて柄じゃない。しかも絶対に毎回気付かれて、鬼道くんは小さく笑うんだ。

「…今日は辺見が調子良かった」
『ほう。そうか』
「最近成神がドリンクの味薄いって言うけど、何も変えてない」
『運動量が変化してきたのかもな』
「佐久間はそろそろ、サポーター、外せるって」
『ああ、本人から聞いた。良かった』
「……ん」
『不動は?元気か?』
「毎回聞いてるだろ。そんな数日で体調変わんねえよ」
『お前はいつも突然熱を出すだろう』
「…元気だよバーカ」

憎まれ口に、電話越しの鬼道くんが笑って、何だかなあ。と眉をひそめる。

最近、鬼道くんばっかイニシアチブを取る。
そうなるとオレはいつもの調子を出せなくて、やけに照れてしまったりもごもごしたり、もう、何だコイツって感じで。そういう自分が気に入らなくてたまらない。
しかも鬼道くんはそんなオレを楽しんでる節がある、ってのが余計に気に入らない。

「ていうか」
『何だ?』

鬼道くんは、3日に1回、必ず電話をかけてくる。
いつからだっていうと、それはやっぱり、あの真帝国の件から。正確に言うと真帝国の後の、オレと鬼道くんが仲直り……って感じの、してから、だけど。

「別にそんな頻繁にしなくてもいいぜ。…もうあんな馬鹿な事、しねぇし」

そうだ。
もう影山が囁いてきたって、何ともねぇよ。
だって鬼道くんがオレや佐久間とか、とにかく帝国を大事に思ってくれてるってのは、知ってるんだ。分かってるんだ。
強さ云々も、多分、佐久間が目ェ光らせってし。暴走しない。

なあ、だからそんなに心配しなくてもいいんだよ。

思って口に出した言葉に、鬼道くんは返事をしない。
いっつも様子を伺ってて、今日やっと言ったんだけど。まだ禁句だったか?

「…鬼道くん」
『不動』
「え、うん、なに」
『心配もあるかもしれないが、それだけじゃない』
「…じゃ何があんだよ」

何だかムッとして追及したオレの言葉に、鬼道くんは戸惑ったように息を吸うのが、電話越しに聞こえる。
おっ、とちょっと得意げに思ったのは、やっぱりイニシアチブを取り返せたような気がしたからだ。
だって鬼道くんが帝国に居た時はまだ五分五分だったし。

『宇宙人の話の時は、俺自身も切羽詰まっていたから電話もできなかったが』
「うん」
『……今俺が電話をかけているのは、お前と話をしたいから、だ』

は。

鬼道くんの言葉が耳を通り抜けていく。脳を使って単語同士が引っ付いていって、オレの頭を響き渡る。
えっと。
待て、えっと、オレと話したいから。

「……へ、ぇ…」

やっべえ裏返った。

じゃなくて。
いやいやいや待てオレ深読みしてんじゃねーよ違う!違うってゼッタイ鬼道くんが、そんな!!

『だから俺は、これからもその、お前に掛け続けたい。…迷惑か?』
「ンな訳!…、……ない、し」
『…そうか。ありがとう』

ホッとしたような鬼道くんの声でなによりだけど、オレの顔は多分赤い。熱い。電話で良かった。見えてたら、何かオレ一人勘違いして恥ずかしいじゃん。
鬼道くんはそんな下心で絡んでこねーよ。何だよオレ。……くそ。













『あ、でも』
「何だよ」
『いや、電話代、俺のせいで高額になりそうだな。…払わせてもらっても』
「ふっざけんなバカそんくらいどーにでも!なるっての!バカ!」



(20111018)
不動ちゃんは意識し始め。声だけじゃ分かんないけど3期で会って態度見て好かれてるのを知る、予定。
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -