不動のどこがいいんだ?

逃げ去る男子生徒と、こっちを向いて仁王立ちする不動を前にして、思った。
思った、ら、口に出た。

「お前のどこがいいんだ?」
「…知らねえよ」

ぴくりと不動の短めの眉が動いて、まあ今の質問は失礼だったかもな、と納得する。

「どーせ顔だろ」

フンと苛立ったように、今はもう見えない男子生徒の走り去った方向を睨み付けた。
そんな不動に、あ、と思いながらも、訂正を入れるのもちょっとな、なんて息を吐く。

俺が思ったのは、さっきの奴じゃなくて、鬼道さんの事だった。

「そんな遅かったか?」
「何が」
「あ?」

相変わらず柄の悪い女だな。思いながらももう一度、「何が」と繰り返す。
不動は眉を寄せて不思議そうにする。というか、怒らないんだな。告白現場にいきなりやってきたのに。

「部活に遅れたから呼びに来たんじゃねぇの?」
「ああ」

そういう事か。

「いや、違う。ただの野次馬代表」
「ハァ!?」

やたら気にする人がいるので。
心の中で小さく呟いた。まあ、ソワソワしてたのは俺も含めて皆だけど。だって告白って。分かってても気になる。

「おっ前なぁ」
「ていうか、今の、結構女子に人気のバスケ部の奴だよな」
「……確か?」
「興味なさすぎだろ…」

いいだろ、なんて乱暴に言う不動に、やっぱりこんな女のどこがいいんだ、なんて思う。
鬼道さん。俺にはさっぱり分かりません。顔はまあ認めるけど。

「俺だったらお前みたいなの、ごめんだな」
「こっちだってテメェみたいな眼帯馬鹿は願い下げだよ」

この男女。と思ったけど、何だか今日は口喧嘩しづらい雰囲気だ。告白現場に居合わせたせいかもしれない。
不動も口答えをしない俺にちょっと目を瞬かせてから、はあ、と息を吐き出す。それから俺に向かって歩き出した。

「今は何の練習中なんだ?ていうか鬼道くん怒ってんじゃねぇの」
「源田にひたすらノーマルシュート。の後に必殺技。鬼道さんは、まあ…10分なら」
「残り何分」
「……2分くらい」

そう言った瞬間。
ぱっちり、と目が合って、それから不動の目が吊り上がる。まあ、予想は、つく。
「馬鹿か!」と言われ2人して走り出す。「うるせえお前が告白されるからだろ!」

「ハア!?何で俺のせいになんだよ!」
「あーもう不動のどこがいいんだ!」
「知らねえよ!」
「お前好きな奴は!」
「い、ね、え!」
「くっそ何で鬼道さん好きにならないでいられるんだ!なってもムカつくけど!!」
「うっるせーよ鬼道くん中毒!」
「黙れ何が悪い男女!」
「何もかもが悪いってのテメェは女顔!」










……で、間に合ったはいいものの。

息を切らしたまま口喧嘩の終わらない俺と不動を前に、鬼道さんの制裁が下ったのは、言うまでもない。

ちくしょう不動気に入らん。
なんて。

それを言っても、まあ、こんな風に馬鹿をやれる仲間だから、認めてはいる。

でもやっぱムカつくから、百歩譲って喧嘩友達な。




(20111015)
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