帝マネ没

2012/04/07 02:41


◎復活させたい(希望)
二期・真帝後







「源田のばかやろう」

罵る声から始まった。
その割には酷く小さな、頼りない声音だったから、俺の口元は少し上がってしまった。
そうしたら息がもれたのか、俺が笑った事に気付いた不動がきっと睨み上げる。その目に涙は溜まっていない。そうだ。不動は俺の前で泣いた事なんてない。

「……お前ら何で」
「なあ、不動」

続く言葉に応えるよりも、俺が不動に気付かせてやりたい。
遮ったからかぱちりと目を瞬かせて、それから不動はすう、と目を細めた。違う。俺は怒らない。
ふと前を見上げて、その中で眠ってるだろう佐久間を思い浮かべてみる。あいつだって怒らないだろう。

病室に入らずに、廊下にぺたりと座り込んで俯いている不動を見つけたのは、数分か前の事だ。病室に向かい合って、彼女が何を考えているのだろうと。想像したってそれが本当かは分からない。
隣に座って壁の床の小さな汚れを見つけ出す事をしていると、不動の罵声から始まったのだ。

「最初俺たちを嫌っていただろう」

ぐ、ときれいな形をした眉が寄った。少しだけ伏せられた目に、長い睫毛の影が落ちる。
そうだなあ。サッカー部に入って、マネージャーのお前を見た時。みんなはっとして見惚れたんだ。言葉少なに、よろしくお願いします、なんて言った、女子にしては低めの、けど俺たちからは高くて涼やかな声にも。

「そうだよ」
「何でか、聞いてもいいか」
「…」

いつも眉をかすかに寄せていて、その癖視線は一途にボールを追っていた。土まみれのボールを拭く姿だって本当に懸命で、ああこいつはサッカーが好きなんだなあ、なんて、感動したんだ。
その代わりに、不動の俺たちを見る表情は、冷たかった。
きっと俺しか知らないだろうけれど、鬼道には、特に。

いつしかそれは鬼道や俺たちの歩み寄りによって和らいでいったけれど、未だにその時の不動の表情が焼き付いて離れない。

思えば俺が真帝国に行ってしまった事を何一つ後悔していないのは、あの時俺と佐久間を勧誘してきた不動の顔が、初めの頃とそっくりだったからだ。




―――――
源田は甘い
佐久間は厳しい
が、帝マネあきおちゃんへの対応



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