鬼不イン落乱@

2012/04/04 15:10

「こっちですよー!」
「はやくはやく!」
「おいおいお前たち、もうちょっと気遣ってやりなさい!」


騒がしい声に、ああまたあの一年生がやらかしたな。なんて思う。
俺自身はあんまり三人揃って関わった事はないけど、摂津のきり丸、にはよくバイトに誘われるので、一年は組の厄介さは承知してるつもりだ。苦労してる土井センセーの声に、誰かを案内してんだろな、と見当をつける。

今度は誰を連れてきたんだか―――。

近くの地面に置いてあった手拭いを首に回しながら、ちょっとした野次馬根性で振り返った、ら。




「え、………き、どう?」

はっ?
眉が寄って、じっと目を凝らしてみる。

鬼道くんである。

嘘まじで?
けどあのドレッドに赤い鋭い目は鬼道くんのものだ。てかゴーグルしてない。まあしてたら怪しいだけだけど(前から怪しかったけど、このよく分かんねえ時代からすりゃ余計に)。マントもない。いやつうか大人になってからはしてなかったけど、今の鬼道くん(仮)は10代くらいっぽいし。


…呼んでみるか?
違ったら誤魔化せばいいだけだもんな。頷いてから、息を吸った。


「…………鬼道!」
「、」

あ。

「え………不動…!」


やっぱり鬼道くんだった。
俺を見て目を丸くするその姿に、何だか面白くなって笑ってやった。


◎◎◎◎◎◎◎◎◎


鬼道くんの話からすると。

気付いたら14歳ほどの見た目になっていて、混乱しながら辺りを見回したら山森草が鬱蒼としていて、街ならぬ村や(百歩譲って)町しかなくて、唖然としていたら。
やたら元気な子どもに囲まれて、ポロリと弱音をこぼしたら。
「じゃあ私たちのいる忍術学園に来てみてはどうですか?」なんて言われて。
なんて礼儀正しい子どもなんだ教育が行き届いている。と感心してから、忍術学園って忍者って事か何だそれ見てみたい。と思って。
手を引かれながら歩いて歩いて、とにかく最高責任者に会いに行く時に。

「ところで不動ポニーテールとか可愛すぎる」
「ああハイどーも」
「お揃いだな」
「ああウンそーだな」

抱き付いてきて離れようとしない鬼道くんの背中をポンポンと叩いて、小さく溜め息を吐く。



声に気付いて初っ端から抱き締めてきやがった鬼道くんと俺を唖然として見てきたは組三人と土井センセーにどうにか時間をもらって、自室までズルズル引きずって聞き出せば、これだ。

「…あんま悩んでねーの?」

俺初め悩み過ぎてハゲるかと思ったわ。って、俺が言うとちょっとギャグになんねーので言わないでおこう。

「いや」

頭だけが離れて、少し近い距離だけど鬼道くんの苦笑が見える。

「…お前に会ったら、気が楽になった」

あ。
クマ、あるわ。
そうか。何日かきっと、一人で、不安に過ごしてきたんだろうな。

それに気付くと、何だかこいつを甘やかしたくて仕方なくなった。

「お疲れ」

頭も引っ張って、肩に埋めて、撫でてやる。頭と言わず、首とか背中とか。
忍術学園じゃーまたもや孤高な(笑)俺だが、鬼道くんとは長年の付き合いだ。こいつに対するデレは心得ているのだ。
そうすると鬼道くんは一度体を堅くしてから、はああと溜め息を吐いてヘニャヘニャにさせた。

「とりあえず不動かわいい…」
「……ウンありがとう」

ところでな。

俺たち今すっげ覗かれてんだけど。


まあ孤高な(笑)俺がデレた(笑)相手が忍術学園に初めて来た奴だから。聞きつけて気になった五年生あたりが、何人か天井裏に潜んでる。
俺の対応に動揺した何人かの気配がもれてるし。

今度は俺が鬼道くんの肩に顔を寄せて、耳元に口を寄せる。

「見張られてんの分かる?」
「!……これはやはりそうなのか」
「鬼道くん南蛮留学してたって事でいいよな」

口早に、あと小さく告げてから、よしっと立ち上がって鬼道くんも引っ張り上げる。
ポーカーフェイスは俺と鬼道くんだって慣れてるもんで、いやまあ俺は三割り増しくらいでニコニコしてっけどな。俺だって鬼道くんに会えたの、嬉しい、…し。


「鬼道くん今身寄りないし、とりあえず学園長センセーん所行こうぜ。運が良きゃここ居られるかもな」

目を瞬かせてから、鬼道くんは目を細める。やわらかく。
それを見ると、ああ鬼道くんだなあ、なんて思って握った手が離しがたくなる。

まあ離すけど。






※不動はなんか転生かそこら、鬼道は若返りトリップって感じだったような気がしないでもない



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