支部から鬼不A

2012/11/05 20:36

◎鬼不10年後妄想捏造同棲してるぜ!!




「ネクタイを締めてくれないか」

玄関先。朝の事。
真顔で言われたその言葉に、オレは一体どう思ったかって。お分かりだろう。
ドン引きだ。

「……」
「やってみてくれ」

お前。何だよその表情。何で真顔なんだよ。もしかしてあれか、オレが照れながら「ま、まあ、別にいいけどよ」とか言ってくれるとでも思ってんのだろうか。ふざけろ、そういう萌えはオレに求めるな。アニメとか見てても引かないから存分に見てな。妹萌えとかしてたら色々告げ口はするかもしれないが。

と、言おうと口を開けた所で。

「腕を骨折してきてやろうか」

え。ええー。何その真顔。え、何きもちわるい。何そこまでオレにして欲しいとか?きもい。やめてくれ。
多分冗談なんだろうけど、これでオレが放置したら実行しそうな気もプンプンする。鬼道くんってそこらへん未だに分からん。特に今はあの緑サングラスに目が覆われているので余計に。ていうか何で鬼道くんって緑をチョイズした訳?サングラスって言ったら黒とかそこらだと思うんだけど。オンリーワン目指してるとか。あ、ちょっと笑える。

「時間がないんだ。早く帝国学園に向かわなければ」
「うぜえ」
「ほら、このネクタイだ」

自然な動作で手をすくわれて、その上にネクタイ。紺色のオシャレさの欠片もねー無難なヤツ。まあ派手なのしてたら思いっきり笑ってやるけど。んで鬼道くんは腕を組んで仁王立ち。待ってます、ってか。っていうか悪態ついてやったのに無反応。あきおくんしょっくー。じゃなくて、昔はいちいち反応してたのに、流すようになりやがって。ムカつくから今度すっげーイタズラか何かしてやろう。この際木暮に聞いてしょーもないイタズラでいいかもしんない。

待ってる鬼道くんの目を、サングラス越しに見る。あんま分かんないけど。でも凝視してやる。これでたじろいだらニッコリ笑って玄関から追い出してやるつもり。
けど、鬼道くんは微動だにしない。

「…えー本気かよ」
「マジだ」
「そこでふざけんな。…うっぜぇ」

言いながら、鬼道くんの首に腕を回す。うーんなかなか密着しそうだ。大の男2人がかー、朝からかー。多少ゲンナリしながらも、あーこうやって?なんて考えつつ。
左手が思わずうろついた。

結べん。

「…鬼道くんこっち」
「靴履いたぞ」
「脱げ」

結べなかったネクタイを思わず握り締め、歩いて行く。くしゃくしゃになったけどまあいいだろ。誰も鬼道くんのネクタイなんか気にしねー筈。あ、佐久間は目敏いから分かんないけど、まあいい。とにかく結べんかったのがイラつく。
普段から自分でネクタイ結んでたし、誰か相手のネクタイを結んでやった事なんかない。っていうか帝国の制服はネクタイじゃなかったから、あんま触った事なかったんだよな。今だって首もと絞まる感覚が苦手だし。

「ソファ座れ」

って言って振り返ったら、鬼道くんは悠々と、すでに腰掛けていた。お前急いでないだろ。あとオレ結べない事も想定してたって事ですかね。すっげームカつきます。絞め殺してやろうか。凶器は鬼道くんが手渡してくれたネクタイな。痴話げんかからの死亡。はあーっと溜め息を吐く。まあ鬼道くんのせいで犯罪者になるのはゴメンだ。

ソファに座る鬼道くんの後ろに立って、そこから腕を回す。これならオレが自分にやってる感覚に近いから出来る。そう思ったんだけど。くそ、やっぱもうちょい近付かなきゃ駄目か。
あんまり密着すると癪だったのでちょっと離れて腕を伸ばしてたんだけど、そうすると鬼道くんの頭で手元とネクタイが見えなかった。なあ鬼道くんってこれも想定の範囲内?っていうかお前は一体何を狙ってる訳?
とりあえず心の中で鬼道くんに悪態をついて、しょうがねーと腹を括って鬼道くんの右肩の上に顔を寄せた。よし見える。ちょっと髪の毛くすぐったいけど。っていうかこれ、絶対端から見たらイチャついてるように見える。めっちゃくちゃ癪なんだけど。あーイライラする。イライラしながらもやってあげるオレ超いいヤツ。

「…ん、出来た」

そう言いながら最後にキュッと締める。思いっきりやってやろーかとも思ったけど、何か萎えた。のでやめておく。
そこでポン、って開いた左手で、顔を乗せてる反対の、鬼道くんの左肩を叩いてやる。右手はソファの上にやって、よっこらせー、と体勢を戻そうと、して。

すり。って。

「……鬼道くん帝国でヤな事あったのか?」
「ない。いやある。けどない」
「あるんじゃん言ってみ」

頬をすり寄せられるなんて。こっ恥ずかしい事しやがって。怒らなかったオレを誰か褒め称えてくれ。
ソファから手を離して、鬼道くんの頬をむにゅ、と掴む。

「フィフスセクターの支配下にある生徒を追い出す事になっている」
「ふうん」
「……生徒たちは」

追い出された生徒の将来や、人生。それがどうなっていくか。今回のそれで、どう変えてしまうのか。
ぼそぼそと喋る鬼道くんに、どうだかなあ、と思う。

「お前が恨まれる。それでいいんじゃん。敵味方に今は年齢関係ねえよ」

鬼道くんの頭を叩く。髪が崩れない程度に。
まくし立てて言ったけど、鬼道くんは納得しねえだろーなぁ。いいヤツだもん。こりゃあ鬼道くんが帰ってきた時にうまい説得考えておかなきゃな。まあオレ以外にも佐久間とかレジスタンスとか居るし。一応考える程度で。
とりあえず、さぁ。

「そろそろホントに出勤しないとやばくね?」
「っ!」
「ぅおあっ」

呟いたら鬼道くんがいきなり立ち上がった。オレの顎、ちょっ今当たった痛い。てめえ。睨み付けるけど、その背中は慌てたように腕時計を見ていた。くそやろうてめえ!
思いっきり罵倒してやろうと、口を開いて。

「いってきます明王あとネクタイは今日から毎日頼むぞ!」


え。
なぜに名前呼び。

……きもいとか思いたいのに、やべえくそやろう。

「……いってらぁ…」

右手で顔を覆って、もごもごして、あーくそ好きだなあ、なんて思ってしまって。
悪くねえ、って考えた自分に、何だオレは萌え属性に入っちゃうのか…なんて頭おかしくなってしまった。




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