雷鉢

2012/04/26 16:43


「好きだよ」

言ったら三郎はひゅうと息を呑んでから、それから僕の方を振り向かずに、背中を見せたまま、肩を揺らした。

「ありがとう雷蔵、私も好きだよ」

でも、と三郎は続ける。

「私の好きと君の好きは違うから、私は辛くなるんだ。だから、あまり好きだと言わないで欲しい」

首を捻って僕を見るその顔は、僕のものだけど、細められた目も、不恰好に上がる口元も、全てが僕ではない三郎のものだ。
ぼそぼそと喋る三郎は、言い終わってから小さく微笑む。

「三郎」
「何だい」
「好きだよ」
「うん、ありがとう」
「…好きなんだ」
「ああ、ずっと、友達でいよう」
「……」

伝わらないなあ。


僕だって君を愛しているのに。

君はいつまで僕の「好き」を、友愛だと勘違いし続けるの。







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