帝マネ没

2012/04/04 15:06

◎復活の可能性あり


「木野は化粧絶対映えるよなぁ」

そう言った不動さんはちょっと羨ましげだったから、私は慌てた。

マネージャーが固まって女子会よろしく話していても、後ろには選手たちが元気いっぱいに夕ご飯を食べている。
私たちはそんなに大きな声で話しているつもりはないけど、やっぱり女子の声って通るみたいだし。

「ですよねですよね!」
「お、音無さん…」

不動さんとは反対側、私の隣の後輩さんは、我が意を得たり、とばかりに身を乗り出してきた。思わず苦笑する。
多分このメンバーの中で一番女の子っていう感じの話題に関心があると思う。

「まだメイクとかは早いでしょうけど、何ですっけ、パーティーでしたいです!」
「あ、イギリスの?」
「そういえば皆さん、ドレス選びました?」

冬花さんの問いに、私と音無さんが頷く隣で、不動さんが苦い顔をした。
そういえば、不動さんはパーティーを居残り希望してたっけ。色んな人に説得されて、諦めたみたいだけど。
それで苦い顔してるって事は、不動さん、まだドレス決めてないのね。

「明王さん一緒に選びませんか?私もまだなんです」
「何なら私が見繕いますよ!」

お兄ちゃんと!

音無さんの声が聞こえた瞬間、不動さんの白い腕が伸びて、スパン。叩いた音。―――と、背後の方からゲホッゴホッ。咽せる声。…鬼道くん、気をしっかり持ってね。

「あほかこの…あほか!」
「うーん…明王さんに似合う色は…」
「冬花は話入れよこのマイペース!」

カッと肩をわなわなさせてる不動さんの顔は真っ赤で、かわいいなあと思ったけれど。落ち着こう、不動さん。そう声をかけると、彼女は眉を下げてごめん、と小さく謝った。

不動さんは私にそういう事を言われると何だか弱いらしくて、結構こういう、しょげた顔をする。
あまり話した事のない佐久間くんに、何故か礼を言われた時は困ったけど。
普段強気な不動さんは、女の子には柔らかくなるらしくて。あと、周りに私みたいなタイプの子が居なかったみたい。

「まあドレスは追々として、その、お化粧?」
「あ、うん」
「不動さんしたいの?」

聞いてみたら、不動さんは首を左右に振る。

「オレやったら」
「『あたし』です」
「春奈ほんとしつこい。んでそのやったら、何か多分怖いと思う」

音無さんが、その不動さんの言葉を聞いて、うーんとちょっと考え込む。
怖いってどういう事かしら。

「ギャルみたいな感じでしょうか」
「ギャ、……まあなりそうじゃね、…そんな感じに」

気まずそうに目をうろうろさせながら、ぶすくれるように言った不動さん。っていうか冬花さん、本当にハッキリ言うのね。

っていうか、ギャル。
確かに不動さんはお化粧なしでもハッキリした顔で、何ていうか。色白だから目元とか睫毛も綺麗だし、大きな目だけどツリ目だから、何もしなくても充分美人で、かわいい。
お化粧したらギャルって、そんな事はないと思うんだけど。

けどそれを口にする前に、不動さんはもう一度私を見た。

「だから、木野は映えるんじゃないかなって」
「なりますなります!私いつか先輩にメイクしたいです!」
「お、音無さん」

苦笑い。実験台じゃないのよ?

「」




前へ | 次はありません
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -