Neta memo | ナノ
Neta memo
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2015/10/15 15:40
「次!!貴様だ!!貴様は何者だ」
「ウォール・ローゼ南区ラガコ村出身!コニー・スプリンガーです!」


とんでもないところに来てしまった。

目の前で教官に頭を鷲掴みにされている坊主頭を眺めながら冷や汗を流す。自分の番が来るのはあと何人後かと目線を泳がせる。…坊主頭から数えて18番目か。あぁ、何を言えばいいんだ。
ウォール・シーナ、ストヘス区出身、#名前#・#名字#…何しにここへ来た、と聞かれても言葉は出てきそうにない。それもそうだ、憲兵に入りたいとか王へ身を捧げたいとか、そんな目標も野心も私は持ち合わせてないままここへ整列している。実家は内地のウォール・シーナ、何もせずとも守られる環境に身を置いておける人間だったのに、何故わざわざローゼまで出てきて危険と隣り合わせな訓練を受けなければならないんだ。それもこれも、親に言われるがまま志願書を提出してしまった自分が悪いのだけれど。
別に親は私に兵士になってほしいわけではない。3年間の全訓練課程を終了したら帰ってこいと言われている。だらだらと家の手伝いもそこそこに、自由に本を読み絵を描き、散歩をし…そんなだらけた私に自分を守るすべを嫌でも身に付けさせるために入団させたのだ。…別にそれなら訓練生へ入らなくてもとは思ったが、いつ壁が壊されるか分からないこの時代に、自分の身だけでなく巨人を倒す術も学べれば一石二鳥だろみたいな考えのようだった。そんな簡単な考えで入っていい所ではないことを私は今痛感して…

「貴様だ貴様ぁ!!」
「ヒッ!」

突然の怒声に盛大に体を揺らしてしまった。声の主である教官はいつの間にか私のいる列へ移動しており、芋を片手に敬礼している女の子に質問を投げ掛けていた。…なんで芋持ってんだあの子……。周りは信じられないといったような顔をして彼女たちに注目している。

早々に芋女への興味が薄れた私は再び前を向いて思考を巡らせた。今は周りに構っている暇はないのだ。あぁ、ここへ来たまともな理由を考えなければ…




恐怖の通過儀礼

私の番が来るまで、あと12人



2013.07/16 執筆