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逃走経路の確保の名目で少しは時間が稼げたけど、矢張り彼らが行動するのは時間の問題ね。
すると、周りの雑魚達が一斉に私に向かって銃を構えた。
「…一体、何の心算?」
私はリーダー格である、ライネスに問い質す。
そしてそれは、問うた彼ではなく大津が大笑いして答えた。
「バッカだねェ?逃走経路さえ確保すれば此方のもの。逃走手段なんて幾らでも有るんだから」
小馬鹿にした口調で大津は此方を指さす。
ライネスは、そういう事だ。と目を閉じた。
それを合図かのように、一斉に銃が乱射される。
まるで味方にあたっても良い様な撃ち方だ。
この中の一人の銃の一発でも私に当たれば良いとでも思っているのか…?
でも、誤算ね。生憎私は中也の能力をコピーして来ているの。
『汚れっちまった悲しみに』
硝煙が周りを覆う、相手も私もお互いの姿が認識出来ない、どれくらいの火薬を使ったのだろう?
そんな中、大津の歪な笑い声が木霊する。
「ヒヒヒヒヒッ!これで僕等を邪魔するものはいない!!」
挑発する様な声に、少し私も感情的になっていたのかもしれない。私はそれに応えるように、叫んだ。
「それはどうかしら?」
そう叫ぶと、ライネスは、ほう。と見直したように呟いた。
片原は、驚きつつも私に拍手を送っていた。
撃たれた弾丸は私の目の前でピタリと止まっている。中也の能力のおかげだ、無かったら即死だった。
「君は、重力遣い…なのか。」
私の能力を知らなかったようで3人とも驚きを隠せずに居た、私が能力を解除すると、私の足元に金属音をたてて、弾丸が転がり落ちる。
先程撃った雑魚達はザワザワと個々に話を始めている。能力を初めて見た訳では無いだろうに。騒々しい。
だけど、一人誰とも話してない人がいる…?
怪しい…黒いローブに黒いフード?
他の男達と距離を置いて…?
それにフードに付いている、あの印…
確か、大津と片原にも付いていたはず…仲間の印?
だとしたら、他の男たちに付いていないのは可笑しい…なら、答えは一つ
「あと、もう一人能力者が居るわね?」
私のその問いかけに、銃を持っていた男達が驚きの声を上げ、騒めき始めた。
きっと、下っ端には伝えていなかったのね。
すると、先程のローブの人物がライネスの真横に立つ。
そしてフードを取るとそこには、顔を隠しているのが勿体ないくらいの色素の薄い美少年が現れたのだ。だけど彼の目からは生気が感じられなかった。
顔を見る限り、犯罪者ではなさそう。
では、彼は一体・・・?
「も森、森永虎」
森 永虎?矢張り聞き覚えのない人物だ。
「彼は犯罪者では無いようね。誰なの?」
私は唐突に問いかける。
ライネスは、指を下に指した。
「なにを・・・」
「ここに住んでた子供だ。」
住んでた・・・子供・・・?
確かに、ここはスラム街に近い。
子供が間違えて此方に足を踏み入れても可笑しくはないだろう。
まさか、その子供を・・・?
「森、永虎くん。悪い事は云わない、此方に来なさい。」
そう呼び掛けるが返事どころか、反応すら示さなかった。どういうこと…?
人間は唐突に呼び掛けると少しは反応を示すはずなのに…彼は全く反応を示さない?
そして、私が何度か名前を呼ぶと大津が叫ぶ。
「あ〜もう、うるっせェなァ!」
私は、大津に視線をやる。その視線に気付いてなのか否か彼は此方を向いて、森という少年を指さした
「彼奴は、ボスの異能力で操られてるからどんだけ呼び掛けても無駄だっての!」
此処に居た子供を・・・?
此処に住んでいた何も知らない子供を・・・?
無辜の民を・・・?
「貴方の能力で操っていると・・・?」
ライネスはニヤリと凶悪な笑顔になり、『Correct!!』と云った。
そうだ、ライネスが捕まったのは人身売買の為。
其れも幼い少年少女を拉致し国外に売り飛ばしていた。
そしてフードの少年は丁度ライネスが拉致していた少年少女の年代と同じくらい・・・。
「貴様、またっ!」
「だったらどうする?ポートマフィアさん?」
煽るように私を挑発するライネス。
ライネスの前に立ち塞がる2つの壁、大津と片原。
「貴様らを倒して、彼を救う!」
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