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その声が聞こえた瞬間、片原と大津は恭しく首を垂れた。
「お初にお目にかかる、私の名前はライネス。ライネス・オーランド。」
ライネス・オーランド。
異能特務課でも捕まえるのに手こずった男。
こんな男を逃がして異能特務課は一体なにをやっているのよ。
「そこな男らの上司と呼ぶべき存在かな?」
片原と大津はボス!と一段と頭を下げる。
「嗚呼、では君の疑問に答えようか…。」
ライネスという男は一つ咳払いをし、話始めた。
「片原に異能力は人間の骨をも溶かしてしまう温度でね、抗争とやらも二人に任せきりになってしまったよ。」
そう言葉を発し、苦笑を浮かべるライネス。
なるほどそういう事、だから争った形跡がないのね。
「貴方の異能力…興味があるわ。詳しく教えてくれないかしら?」
そういうと、本人は拒否した。
「自分の手の内を明かすわけないだろう?」
そう云うと思った。
「貴方たちの云うこと叶えてあげる。そうね…まずはルートの確保かしら。」
そう発すると、三人の肩がピクリと跳ねた。
これはいける、私は三人の目をまっすぐ見た。
すると、外野は黙っちゃいなかった。
「手前、調子乗ってんじゃねェ!」
「お前、黙れ。」
外野の男が、私に銃を突きつけると大津は素早く男の傍へ行き、自身の右手を刀に変え脅した。
「お前を殺す事なんて息をするより簡単なことなんだぞ。」
大津が外野のチンピラへ見せしめとして先程、言葉を発した男の首を刎ねる。
男の血は宙を舞い地へ落ちる、それと同時にどよめきが響き渡る。
「他に、僕に刎ねられたい奴は!?」
そう発する彼の眼は血走り、狂っていた。
大津春樹
第1級犯罪者
能力名不明とされている。だが彼の犯行は鮮やかで
周りを探しても凶器らしきものは一切見当たらず
周りの痕跡、更には被害者の傷口に至るまで、無駄な工程が一切なかった。
警察は愉快犯の可能性を調査したが一切手掛かりがないまま2件目の犯行が行われた。
そして、3件、4件と犯行は確実に増えていった
それを見ていた片原は、クスクスと笑って大津を諌めた
「大津さん、ボスが表に出て褒められたいのは解るけど、張り切りすぎだよ。」
そう片原は諌めたが、大津は正気を失っているようで、片原に敵意を示した。
すると、ライネスは大きく息を吸い、静かにだけどハッキリと『大津』と名を呼んだ。
すると、ふっと電池が切れたように項垂れ、そこに立ち尽くす大津。数秒経った頃、勢いよく頭を上げた。
「…すみません、ボス。」
さっきまで正気を失っていた人物を正常に戻すなんて…これがライネス・オーランドの能力?精神に呼びかけるタイプの能力なのか…それともこの2人の忠誠心が高いだけ…?
考えを巡らせていると片原がこちらに呼びかけてくる。
「さぁ、俺の能力の事は話した。逃走経路の確保してもらおうか。」
私は頭を縦に振り、太宰さんにメッセージを送る。
もちろん、逃走経路の確保のメッセージなどでは無い。
『早くしてください、私では間が持ちません。』とだけ。
意訳すると、早くしろ、私が最終手段を使うまで時間の問題だ。ということ。
すると、了解。とだけ書かれたメールが入る。
「逃走経路の確保はしたわ。これで良いのでしょう?」
そう言って先程の太宰さんから送られていたメッセージを見せる。
中央の3人は同時に頷いた。
そもそも、ここのアジトには私ひとりで乗り込んできているのだから周りに人のなんて居ないのだし、逃走経路の確保なんて必要ないんだけれど・・・。
万が一にでも、私が彼らを此処から逃がすことなんてありえないし
そうタカをくくっていた。
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