▼ 0
私は太宰と喫茶処で思い出話に花を咲かせていた。
「いやぁ…あの頃の君は、もう少し感情豊かだったはずなんだけどねぇ?」
太宰は、珈琲を手に持ちそう発した。
「あの会社では、心を殺した方が仕事、しやすいですから。」
そういうと、確かにね、と笑った。
「太宰さんは、あまり変わりませんね。変なところも含めて」
太宰は少しいじけた顔をして、それどういう意味だい?なんて聞いて来る。
分かっているくせに、そういうところですよ。と私は言葉を返す。
太宰は穏やかに笑うだけであった。
……
「そろそろ戻ろうか。」
「はい。」
会計を済ませ店を出ると見知った、というべきか、懐かしいというべきか悩む顔と目が合った
「ゲッ…」
三人揃って同じワードを口にしたに違いない。
「太宰!なんで手前がここにいるんだよ!」
「私たちはお茶をしていただけさ。君こそどうしてこんな所にいるんだい。」
素敵帽子君こと中原中也は仕事だ!と言っていたが太宰は全く聞かず叶霧に気分悪くなっちゃったよーと話しかけていた。
「聞けよ!」
「嗚呼、まだ居たの。」
もうそこからは、いつも通りの押し問答。
どっちもどっちだというのに…
「手前は、あの頃からそうだ。」
「中也も大概だろう」
なんて話は双黒時代の話まで持ち込んだ。
あの時の作戦がどうだとか、あの時の行動がどうだとか。
二人とも、互いを身勝手過ぎると罵り合っていた。
私は堪らず声を上げた。
「二人共です!」
二人はえ?と一言云うとぽかんとしていた。
「お二人のせいで私がどれだけ迷惑を被ったと思ってるんですか!?」
二人はシュンとしていた。
「おかげで双黒の使いだなんて云われる始末です。」
「嗚呼、そんなこともあったねぇ。」
と昔を懐かしむように云う太宰。
「少しは反省して下さい。太宰さんが諸悪の根源なんですから。」
と私が云うと、中也は太宰を指さしケラケラと馬鹿にしたように笑っていたので
「中也、君も。君のせいで到着が遅れたなんて言い訳何度聞いた事か…」
中也は帽子を押さえ、すまん。とつぶやいた。
太宰はというと…
「でも、暴走状態の君を何度も助けただろう?」
「今、その話…しますか。」
……
時は遡り、太宰と中原が双黒と呼ばれていた時代、叶霧露香が双黒の使いと呼ばれ始める話
prev / next