ぽたぽたと足元のタイルが、丸く色を変えていく。それは雨粒であり、ずぶ濡れの私から落ちるしずくであり、また、私の両目からあふれるものである。


 私は今日恋人に別れを告げた。


 別れを告げられたのではなく別れを告げた。だけど、彼のことが嫌いになったわけではない。ただ、私の存在が彼のそばにあるということが、彼にとって危険になっただけ。普段はそんなそぶりは見せないけど、私の仕事はいつ死ぬかわからない危険なもの。そして、正体がばれてしまえば、私も彼も命の保証がない。


「すきだよ、すきだよ・・・・」


 空から降ってくる水は私の全身を濡らす。濡れるはずのないところを私の雫が濡らす。


 これが正しいんだ。
  これでよかったんだ。


 私は間違ってないんだ。そう言い聞かせないと私は崩れてしまうだろう。今すぐにでも会いに行きたい。さっきのは間違いなんだと言いたい。けど、できない。色を変えるのは地面だけじゃない。私の心もだった。



 体を濡らす水滴は、雨だったのか。それとも私の―――。

fin.

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アトガキ
中学のころから温め続けてきた「世界樹の魔物」シリーズのプロローグにあたる話です。このシリーズ実はプロットだけやたらあって(5シリーズ分くらい)まったく書いてないww
筆力が足りなくて、作りこみすぎた世界観を表現できないというトラウマ。
精進します。


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