――落ちたんだ、

「いっちーの恋が叶いますようにいっちーの恋が叶いますようにいっちーの恋が叶いますように!」

 流れ星が。
 ちかっと光った、たったあれだけの間に、マジで願いごと3回言える奴を俺は初めて見た。
 感心してるうちにそいつはぐるんって振り返って、きれーに伸ばすんだって言ってたショートボブがシャンプーのCMみたいに広がって。

「ほら!」

 びしっ。
 これでもかって。勝利のVサイン。
 これでいっちーの明日もアンタイだねっつったそいつのでかい瞳にも星が見えたからおめーキラキラしてんぞ、って言ったら爆笑された。
 キザ男に転職しても似合わないよって。さすが赤んぼ時代からの幼なじみはよくわかってらっしゃる。

「いっちーは誰が好き?」

 そんな他愛もない話。聞いてきたのはあっちの方で、それはいくつも繋がる世間話のひとつで、俺はクラスの女子のカオを暗い空に並べながら答えたのだ。

「藤崎じゃん? 一番カオかわいー、」

 し、みんなそう言ってたし。
 性格わかるくらい話したこともねっから中身は知らない。アイドルグループで誰がいい?って聞くのとおんなじ。そんなもんだよ男子の判定なんて。

「ふーん」

 まだ空覗きこんで。青いセーラーの襟が俺の前で、ひらって。揺れたらああこいつほっせえな。なんていまさら気づいた。アレでも女子ってみんなこんな感じか。

「そっかオマエ女子だったな」
「なあにをー!?」

 世紀の大発見、コロンブスあんたの気分がすげーわかるぞ。
 そっか俺の目の前でほっぺた風船みたいにしてやわっこそうな、コイツは。

(――、)

「あっ! 見て見ていっちー!」

 ちかっ。
 ひかって、走ってく。

「いっちーの恋が叶いますようにいっちーの恋が叶いますようにいっちーの恋が叶いますように!」

 俺の心臓ごとわしづかんで。

「ほら!」

(おめーキラキラしてんぞ)

 あ、

 ――落ちた。

(好きの自覚って奴はある日突然予告もなしに俺を落としてく)

Fin.


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