31 《magician side》


 適当な振り付けをする男子もいたけど、みんなの顔が弾けるくらいの笑顔だったからそれくらいのことはどうでもよかった。ひたすらに楽しくて、辛かったこと全てがはじけて消えていった。

 曲が終盤に差し掛かり、あたしは驚きのあまり言葉を失っている北島君の元に向かった。


「ほら、出番だよ、出番」

「僕は何を……」

「何もしなくていいってば」


 そしてステージの中央に連れて行くと、大きな拍手の渦が巻き起こった。北島君が息を呑んだのが聞こえた。


「みんな、この劇が好きだったんだよ」


 精一杯の笑顔で、あたしは自分の思いを伝えた。北島君は照れたように「ありがとう」と頬を掻いた。

 曲が終わっても拍手は絶えることがない。宇藤君が大きく息を吸って、観客全員に声をかける。



「これで『シンデレラ』の公演は終わります。今一度大きな拍手を!」



 拍手の音はまるで雨のように、中庭とあたしたちを爽やかに包みこんだ。



【End】



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