今様歌物語
〜君に会いたい〜
04
僕が彼女に出会った日、僕は初めて僕の使命――小説という形で誰かの心の叫びを、誰にも聞こえない、声にもならないような叫びを伝えなければならないという使命――に気がついたのだ。彼女との出会いは、僕の運命を左右したと言っても全く言い過ぎにはならないだろう。僕はそれから毎日小説を書き続けた。この部屋に通い、彼女との再会を祈るかのように書き続けた。僕はわからなかった。なぜ、何が僕をそこまで突き動かしたのか。
よく考えればわかるのか?
彼女――鳥遊緋穂に会いたい、果たしてそれだけだったのだろうか?それでは僕の使命はどこに行ったのだ。さてはあの日々のどこにもなかったのか……?
僕は首を横に振る。いや、そんなはずがない。僕は僕のために、僕の使命に忠実にのっとって小説を書いたんだ。それ以上でも以下でもないさ。僕の中には確かに、伝えたい何かが常に存在していたし、それゆえに僕は常に小説を書き続けることができたのだ。
僕にとって鳥遊緋穂とは何なのか?
「分かってきたみたいね」
僕は執筆活動に対して最初からこんなに熱心だった訳ではなかった。執筆は趣味でしかなかったし、ここまで熱中することなど夢にも思わなかった。いつからだろう? 記憶を手繰り寄せたその先は。
僕が初めて僕の使命に気がついた日。そう、彼女と初めて出会ったあの日に違いない。
「まさか、君は……」
本当に、そうなのか? そんなことが、あるのか?
「そうね、正解よ。本人に気付かれないっていうのは、ちょっと寂しいわね」
彼女は僕の、文学に対する思いそのものだったのだ。
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