Prologue
昔々、あるところに一人の愛らしい娘がおりました…――。
書物庫で、何気無しに手に取ったのは古びたハードカバーの童話集。
在り来たりな冒頭文で始まる物語の主人公は、いつだって慈悲深く美しい娘だった。
どんなに酷い仕打ちを受けたとしても、最後には"素敵な"魔法や登場人物に助けられ、想い人と結ばれハッピーエンド。
また、恐ろしい呪いさえも"真実の愛"で打ち破り、自由を手にするのだ。
くだらない。
眉間に皺を寄せながらもパチン、と指をならすと、手元にあったはずの童話集はどこにもなく、右手に握られていたのは上品な香りの紅茶だった。
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