十月二十日、月曜日。
図書室登校した僕は、真っ先に、サガさんに、内部進学しないことを伝えた。
「自分で決断できたのか」
「まあ、はい」
「偉いぞ。自分で決断することが大事なんだ」
サガさんはそう、はにかみながらほめてくれた。
サガさんと一緒に、勉強していると、戸が、突然開いた。
悪い嵐の予感がした――こういうとき、僕の予感は、たいてい当たる。
「失礼します……あ、ユキヤくん、そこにいたんですね」
素知らぬ顔をして、何事もなかったかのように入ってきた、その人物は――ハルヒコ。
森にふたたび、裏切り者登場。嵐の予感。
「うん? なんか用があるの?」
驚きと恐怖でしゃべれない僕に代わって、サガさんが、応対する。
「その、図書室の本、返し忘れてたんで、返しに来ました」
おそらく、それ以上に、違う目的があるのだろう。
それにしても、なぜ。ハルヒコたちに対する生徒指導は、内密に行われたはずだ。懲りていないのか。精神が、僕とは違って、太くて強靭なのか。そもそも、なんで、僕の居場所を知っているんだ? それとも、図書室にいるとは知らなかったのか。
「ああ、そうなんだ」
そう言いながらサガさんは、入り口にいる、ハルヒコに向かって歩いていく。決して、僕に近づかせないためだろうか。その間にも、僕の足は震えだす。
「これです」
そう言ってハルヒコは、本を渡すと、サガさんにしゃべる暇を与えずに、続けた。
「あ、あと、僕、ユキヤくんのクラスメイトなんですけど、彼、大丈夫ですか」