十月八日、水曜日。
父に送ってもらい、学校の駐車場につくと、そこにはやはり、サガさんがいた。
サガさんは、僕に会えたことがとてもうれしいようで、「会えてよかった」と何度も言っている。
いつも通り、といってもここ最近のいつも通りだが、図書室で過ごしていると、担任のカトウ先生と学年主任のナガタ先生がやってきて、サガさんを廊下へ呼び出した。
なんとなく聞こえてくる話し声からして、この前の話し合いの内容を伝えているようだった。なんとなくでしか聞こえていなかった話し声の中、とつぜんはっきりとした声が聞こえた。
「おかしいじゃないですか、それじゃあ!」
サガさんの声だった。
「しょうがないんですよ、クラスがそのままあがるのは、規則なんですから」
この声は、ナガタ先生。
「規則って言っても……それじゃあ泣き寝入りと変わらないじゃないですか!」
「とにかく、規則は規則です。お願いしますね……それから、これ以上、生徒の問題に出しゃばらないでください。限度を超えたらどうなるかくらい、大人なんですから、わかりますよね」
無音になった。まもなく、サガさんが、図書室の戸を開け、戻ってきた。
「あ、もしかして聞こえてた?」
僕の表情で察しがついたのか、サガさんは、少し申し訳なさそうに言った。
「ええ、まあ」
「昨日も言ったけど、最後まで味方だから、絶対に」
僕を見つめるサガさんの目は、どこまでも真剣だった。
サガさんとなら、木々が倒れてもすぐにたくさんの木に覆われた森を、さまよえるだろう。出口に向かって、歩いていけるだろう。
けれどどうして――どうして、こんな僕に、ここまでしてくれるのだろう。どうして、僕のことをこんな真剣に考えてくれるのだろうか。