13.仲良し三人組

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 断れることならちゃんと断ろう。そして、友人とはいえ安易に信じてはいけない。それは生徒会入会を経て一番に学んだことだ。
「どもっ! 写真部です」
 立て付けの悪いスライドドアを勇ましく開けて入ってきたのは、見覚えのある顔だった。
「あ、許斐くんと……えーと、越路くんだよね。こんちには」
 見覚えはある。名前はわからない。おまけに書類の整理も終わらない。
「あたし、同じクラスの巽真奈美(たつみ・まなみ)。どうせ苗字読みにくいから真奈美でいいよ」
 提出された予算案と決算を照らし合わせながら、同級生の話に相づちを打つ。
「ん、よろしく巽さん」
「あなた人の話聞いてないでしょ」
「ハセ、この計算合ってないぞ」
「ちょっと、言ってる傍から……」
 なんだか不機嫌そうな女の人が前にいる、くらいの意識しか働いていなかった。
「えー、俺のせいじゃないよ」
「自分に報告しろって言ったのお前だろ。僕は間違いがあったから報告しただけだ」
「はー、なんでこうも間違いが多いんだよ。ここ一応頭いい高校なんじゃないの?」
「数学が得意で算数が苦手なんだろきっと」
 ため息と咳払いばかりの彼女が静かになったと思ってそちらに目をやると、至極面白そうにこちらを見ていた。
「ふふっ面白いんだ。君たち仲いいんだね」
 そう言って僕たちを見つめる細い瞳は挑戦的で、好奇心を隠しきれていない。
「そりゃあ俺とケンは中学からずっとこうして仲良くしてたもんねえ」
「擦り寄らないでよ気持ち悪いな」


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