第2話 


「きょーつけー れー」

「あざーしたー」

入学早々なにこのやる気のない号令!!ちょっと野村さんビックリだわ。なんて心でごちりながら教科書をしまって代わりに召喚したのはお弁当。

朝大魔王ことお母さんが冷食を一気にチンしてものの20分足らずで作ったこちらのお弁当です。

……明日から自分で作ろう。

バタバタと購買にダッシュするクラスメート達を横目に見ていると後ろから肩を叩かれた。

「なに?」

「あんたどうせ一人だろ、こっち来るか?」

「ちょ、なにそのボッチ宣告、聞き捨てならないんですけど」

「事実だろ」

「くっ…!」

ジットリとした目線を送ってもこいつには無効なことがよくわかった。実際に今、鼻で笑われてしまった。なんていうかこいつは私をイラつかせるのが上手いと思う。

「人数は多い方がいいだろ?」

「…そうね…じゃあ、お邪魔します」

この学校は基本的に食事する場所はフリーのようで、意外とお弁当を持ってグループと食べてる人が多かった。

「……」

「……」

机と椅子を反転させていただきますと手を合わせた時に、湿気をまとったようなジットリした視線に気がつく。

微妙に眉間にシワを寄せた噂の橋本がいた。肘をついてこちらをただひたすらジットリ見ている。いかつい。

「あぁごめん、こいつほとんど寝てんだわ」

さっきまで爆睡してたから、と言いつつヒラヒラと橋本の顔の前で手をふる原田君を見てなんかこいつら兄弟みたいだなー、なんて。

「お前、名前は?」

ふわぁ、とあくびまじりにかけられた言葉。謎の威圧感。なんだこいつ。

「野村 遥」

「……橋本 徹だ」

「あんだけ騒いだらみんな知ってるよ。
まぁでも、よろしく。」

クスリ、と笑みを含んで言った。怖じ気づくのは好きじゃない。

「やるねぇお嬢ちゃん、徹にそんな口きく女子初めて見たわ」

「怯えても負けた気がするだけじゃん?」

パクリ、たまごのふりかけがかけられたご飯を一口。

「橋本……さん、も、顔はいいんだからもっと愛想よくしたらどう?」

そんなガン飛ばしてみんな怖がっちゃうよ、と付け足してまた一口。

「変な奴だな。お前。」

「よく言われる。」

変な二人組とちょっとばかし仲良くなったランチ。

橋本はなんとトマトが嫌いなことが原田君の暴露発言により発覚して、笑いをこらえるのに必死だった。

そしたらトマトを口のなかにつっこまれた。ひどい。

彼らと友人関係を結んだ今、これまでの平和な日常は遠退いただろうけど。

なんだかんだで面白くなりそう、だな。なんて思ったりして。



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