…………………
『赤也くんもノート買ったの?』
「お、俺もちょうど切れかけてたんで…へへっ」
授業中にノートなんかとってないけど、名前さんに呆れられないよう誤魔化した
あの後、文房具屋に行くっていう彼女についてきたのはいいけど…あれ、これってデートじゃね?と俺の心は躍る
意識しだすと、妙に制服姿のカップルが目についた
「なぁんか…デートみたいっすね」
『え?デートじゃないの?』
「…………へ?」
『ふふっ、端から見たらカップルだね私たち』
クスクスとイタズラっぽく笑う名前さんに、俺の躍ってた心が飛び跳ねた!
デート…!!待ち望んでた単語っ!!やっべ、これかなり脈ありなんじゃね!?もしかしてもしかすると…!!
「…………」
ここにきてハッと気がついた
名前さんに…彼氏はいるのだろうか?
勢いでデートしてるけど、俺が無理矢理ついてきたわけだし…丸井先輩たちからも聞いてない
いや、待て待て。まずなんで丸井先輩は名前さんのアドレス知ってたんだ?クラス違うのに。もしかして丸井先輩が…!
「待てよ…興味無さそうなふりして仁王先輩も怪しい…なら同じクラスの幸村部長だって…!!」
膨らむ妄想と不安。名前さんなら彼氏の一人や二人いたっておかしくないんだ
略奪愛はどんとこいだけど浮気願望はねぇし。ちゃんと聞いとくべきだったチクショー
「あ、あのっ名前さ…あれ?」
隣を見たら彼女がいない。さっきまでいたはずなのに
サッと血の気の引いた俺は、人混みの中で立海の制服を探す。そして……見つけたっ!!!
そこでは同じ立海の学生に腕を掴まれた彼女が、困った顔で相手を見上げていた
「名前じゃんっ!!なにしてんの?」
『…かいもの』
「あ、じゃあ俺のにも付き合ってよ!暇そうだし名前」
『暇なわけじゃないよ…』
「は?暇じゃないなら優等生の名前が、街を一人で…」
「一人じゃねぇよっ」
『あ……』
気がついたら俺は、男子生徒の腕を掴んでいた
名前さんとタメ口だから先輩か〜と、ちょっと焦ったけどそこは気にしちゃ負けだ
「切原っ!!?」
「名前さん、今は俺とデート中なんで。邪魔して欲しくないんすけど」
「で、デートっ!!?名前……まじで?」
『うん、まじ』
「っ!!!」
相手は悔しいような驚いたような、複雑な表情に変わる
けど邪魔しちゃ悪いなぁって下手くそに笑いながら、俺たちの前から逃げるように走り去った
「…………」
『…………』
「…………あ゛」
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