"ドキドキな一日!いつもと違うことが起きるかも?"
『――おぉ!』
「どうしたの?」
『占い付きのお弁当カップ!ほら、これっ』
お昼休み、不思議そうな表情を浮かべる友人にお弁当に入っていたカップを見せる。
それを見るなり呆れたように溜め息をつかれた。
「はぁ…、そんな子供騙しの占い当たるわけないじゃん」
『もー、夢がないなぁ』
「じゃあ名前は本気でそんなの信じてるの?」
『それは……』
まぁ、私ももう中2ですから?
まるっきり信じてるってわけじゃないけど、本当にあったらいいなぐらいには思うわけで。
…それにしても、ドキドキな一日ってどういうことだろう。
***
『――あれ、ブン太先輩?』
「よっ、名前!」
『…今日はお菓子作ってないから分けてあげられませんよ?』
調理部の私は、以前お菓子の匂いに釣られてやって来たブン太先輩と知り合いになった。
何度か作ったお菓子を分けているうちに懐かれてしまって。
…そして、いつの間にか私は先輩のことが好きになってしまった。
いつもと同様、家庭科室の窓からひょっこり顔を覗かせるブン太先輩にそう言うと、「ちげーし」と返される。
『?じゃあ今日はどうしたんですか?』
「や、その…な……」
『あ、もしかしてお腹空いたんですか?ダメですよっ、この期間限定のチェリー味のチョコは誰にもあげませんから!』
「だから、ちげーって!」
『もう…じゃあ何なんですか、早く用件を言ってください』
そろそろ部長の視線が痛い。
一応、今って次は何を作るか考える時間なんですから。
ちょっと急かすように言うと、赤らめた顔をバッと上げられ目と目が合う。
うぅっ…、顔が赤い先輩もかっこいい。
こんな時にまでそう思ってしまう私は、完璧ブン太先輩に溺れている。
でもこの気持ちを知られてしまったら今の関係が壊れてしまうかもしれない。
だから、平然を装ってニッコリ笑いかけた。
「…っ、部活終わった後!校門で待ってっから!」
『…え?………あ、ちょっとブン太先輩!?』
呼び止める暇もなく、先輩は脱兎の如く走り去って行ってしまって。
様子のおかしいブン太先輩に、私はその後の部活中ずっと疑問符を浮かべるばかりであった。
『……』
「……」
『……あのー、先輩?』
「…な、なんだよぃ?」
『いえ、あの…今日は本当にどうしたんですか?』
部活後、捨て台詞通りに校門に行けば「一緒に帰ろうぜぃ」と言われ…。
さらに家まで送ると言うので、ブン太先輩と二人、ゆっくりとした足取りで歩いているもののそこに会話はない。
いつもは気を使ってくれているのか、部活のことや日常の話をしてくれるのに、今日はその正反対だ。
どことなく顔も赤いし、熱でもあるのかな?
「ど、どうって?」
『いつもと様子が違うし、大人しいブン太先輩は気持ち悪いです』
うわっ、私の口の馬鹿!
好きな人に気持ち悪いって…!
慌てて口元を手で押さえ、怒られると思いながらチラッと隣を歩く先輩を見上げた。
「…だよなー…こんなの俺らしくねーよな…」
『…ブン太先輩、?』
「……名前!」
『はいぃっ!?』
ガシッと肩を掴まれ、あれよあれよという間に私はブン太先輩の腕の中にいた。
なになにっ、この夢みたいな状況!?
『え、えっ…先輩!?』
「名前…あの、な…」
『……』
…あ、いつも先輩が食べてるガムのグリーンアップルの香り。
その甘い香りに頭がクラクラしてくる。
こんなことされたら、自惚れちゃうよ。
気持ち溢れちゃうよ…。
『…ブン太先輩、私…先輩が好きです』
「……え、」
『…先輩、は?』
「……」
『……』
「…んだよぃ、わかってるくせに」
『先輩の口から、ちゃんと聞きたいです…』
お弁当の占いカップ、当たってるかもしれない。
「――名前が、好きだ」
だって、ほら。
今までにないぐらいドキドキして、私と先輩の関係が今、変わったんだから。
この恋、大当り
(これすごい!記念に残しとこっ)
(なんだよ、それ?)
(お弁当の占いカップですよ!)
(は?)
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相互記念として、蒲公英の指輪の斎槻様へ捧げます。
後輩らしさが出てるのかは不明←
斎槻様のみお持ち帰りオッケーです!
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