少しだけ縮まる距離![]() 「くらえっ、10万ボルト!」 「あーっ、光太くんひどい!いいもん、回復技使うからっ」 「あっ、美羽ずりぃ!」 丸井家に来てから数日。 小四コンビは最初の予感通り、既に仲良しでした。 夕食後のまったりとした時間、各々が好きな風に過ごしていて。 私はというと、草太くんの宿題を見てあげていた。 うん、算数の一桁の足し算だしもうバッチリ。 『草太くん頑張ったねー』 「へへっ、未央姉ちゃんありがとう!」 『…かわゆい……』 さすがに小学生は、男の子は男の子でも苦手じゃなくて。 むしろ小さい子は好きである。 それにしても……。 「うー、ポッフル上手く作れない」 「貸してみろよ、コツ教えてやる!」 あー…うー…、いいなぁ。 私もポケ○ンしたいなー。 うずうず。 ――数分後。 「おーい、お前らそろそろ寝る準備しろぃ…………、って何してんだ?」 『いっけー!!ラッキーっ、タマゴばくだんっ!』 「未央ちゃんのラッキー意外と強ぇっ!」 「お姉ちゃんすごーい」 「未央姉ちゃん、俺にもやらせてっ」 私は完璧に二人に交ざってDSを手に遊んでいた。 漁り出してきたポケ○ンだけど、久しぶりでも結構技とか特性とか覚えてるもんだなぁ。 「あっ、ブン兄ちゃん!」 「ブン兄ちゃんもやる!?未央ちゃんすっげーんだぜぃ」 「…お前、小学生に交じってポケ○ンって……」 『うっ…い、いいじゃんか!』 てか、またお風呂上がりだし! さすがに今日はちゃんと洋服着てるけどっ。 「お前ら寝る時間だろぃ?」 「えー!」 「…って言おうと思ったけど、やーめた」 『??』 「マリカー!みんなでやろうぜぃ!?」 「「『わぁ…っ!』」」 結局、みんなでWiiのマリカーを交代でやってからお開きになった。 美羽も楽しそうだったし、良かったな。 妹、弟くん達は既に夢の中で。 私はというと、何故かリビングで赤い髪と一緒に紅茶を飲んでいた。 …飲むか?って聞かれて、答える前に紅茶煎れられたから仕方なく!いるだけだしっ。 ていうか、甘すぎない?この紅茶。 『……』 「……」 まぁ、そこに会話はあるはずもなく。 ただ紅茶を啜る音だけが、やけに大きく聞こえる。 美代子さんはお風呂、慎太郎さんはまだ仕事から帰ってきていないため、リビングには私達二人だけ。 「…なぁ、未央」 『……はぁ!?』 「な、なんだよ?」 『んなっ、な、名前っ!?』 「中津川だと美羽ちゃんもいんだから、名前で呼ぶに決まってんだろぃ?」 『っそ、だよね…』 パパ以外で男から名前で呼ばれたのなんて、何年ぶりだろうってぐらい久しぶりで。 思わず大声出してしまった。 「ってことで、お前も俺のこと名前で呼べよな!」 『は、?』 「お前、ここに来てから一度も俺の名前呼んだことねーじゃん。光太達のことは名前で呼んでんのに」 『……』 …確かに。 心の中でも、いつも"赤い髪"の人だったかも。でもでも! 男を名前で呼ぶなんて、考えただけでもかゆすぎるっ。 湿疹が出てきそうな勢いだ。 「母さんは許婚とか言ってっけど、そんなのナシでさ。とりあえず同じ家に住んでんだから、もっと気楽に考えよーぜぃ?」 『……』 この人、意外にちゃんと考えてるんだ…。 結構私、失礼な態度だったのに。 ……ちょっとだけ、名前を呼んでみようかなって思った。 「ほらっ」 『……ブ、』 「ん」 『…ブ、ブブブ…ブン…』 「……」 『………っ、ブン太!』 「ん、やれば出来んじゃん」 『…っ、!?』 ポンポンと頭を撫でられ、悲鳴を上げそうになったのを必死に我慢した。 …頭の中はショート寸前だったけど。 「つーか、ラッキーとかっ…マニアックすぎだろぃ!ぶはっ!」 『…っ、ラッキー馬鹿にすんな!』 |