即バレました








「なるほど、では中津川さんは今丸井くんの家でお世話になっているんですね」

『………まぁ、』




バレました。

早々に、この赤頭にバラされました。(許婚っていうのはさすがに言ってないけど)


春菜が"精ちゃん"と呼んでいた人に脅されて。




「もしかして、未央が朝から言おうとしてたのって、このこと?」

『…うん』


あぁ、今すぐ春菜を連れてこの場から去りたい。
四方八方から突き刺さるこの視線から逃げたい。

男だらけのこの空間に、私はひたすら顔を俯かせて春菜にベッタリくっついていた。




「つまらんのぅ。じゃあブンちゃんの彼女じゃないんか?」

『当たり前!誰がこんな変態の彼女なんかっ……てか、男なんかのっ!!』

「お前、いい加減その変態っての止めろぃ!」

「だから落ち着けって。…まぁ、中津川男嫌いだってのに居候先がブン太の家なのは可哀相だな。同情するぜ」

『……』



なに、良い人もいるのか。
チラッとしか見れないけど、ありがとう黒い人。



「本当!ブンちゃん、未央のこと虐めないでね?」

「虐めねーよっ」

「つーか、この人マジで俺達と視線合わせませんねー?こんな人いるんスね」

『………ひぃっ!?』


つんつん、ともじゃもじゃ天パ頭に突かれ、私はビクッと体を硬直させる。



『さ、触んないでって!』

「うわーこの反応ウケんだけど!」

「赤也、あんまやるとビンタされるぜぃ?」

『なっ…そ、それはあんたが悪いんでしょっ!?』

「丸井の頬は中津川によってできたのか。…ふむ、データに加えておこう」



なんのデータに加えるのだろうか。
頬に貼られた湿布を見ながら、ノートに書き込んでいる糸目の人。


それに、妙に礼儀正しい眼鏡の人と老け顔の人。


テニス部とやらは、どんだけ個性的な人達の集まりなのかと思った。





「中津川さんって面白いなぁ、ふふ」

『お、面白くなんかっ…!……ない、です。はい…』


この人苦手だ。
その綺麗すぎる笑みが怖いだもん。


…っていうか、もう我慢の限界!!





『私っ!先生に呼ばれてる気がするんで!!じゃっ!………うっぷ』


猛スピードでお辞儀して、猛ダッシュで屋上を飛び出した。






「あっ、未央お弁当忘れてるよー!」

私のお弁当を持って追いかけてきてくれた春菜。



私たちがいなくなった後、屋上でどんな会話が繰り広げられていたかなんて、知る必要もないし知りたくもない。







「呼ばれてる気がする、って…それ呼ばれてねーだろぃ」

「しかも、最後"うっぷ"って吐きそうにしてましたよ!」

「ふっ、変な女ナリ」

「しかし、あのスピードは敬称に値する。女にしておくには惜しい人材だ」

「ええ、本当に」

「ますます興味深いデータが取れそうだ」

「俺達にこんな反応を見せる子は初めてだね。気に入っちゃったなぁ」

「…本当に同情するぜ、中津川」






――後に春菜から聞いた話。



綺麗な人は幸村精市。
老け顔の人は真田弦一郎。
糸目の人は柳蓮二。礼儀正しい眼鏡の人は柳生比呂士。
銀髪の人は仁王雅治。
黒い人はジャッカル桑原。
もじゃもじゃ天パ頭は切原赤也。



これが、彼らの名前らしい。


聞いた所で私とはもう縁のないことだし、右から左に流れた。
これ以上男と関わるのは御免である。



あー…
それにしても、男に囲まれたせいで気持ちが悪い。

吐きそう……、うっぷ。




  


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