今日から二学期







『うわーん!会いたかったよぉっ、春菜ー!』



友人・長友春菜が教室に入ってくるなり、私はその細い体に抱き着いた。



「うわぁっ、おはよう未央」

『うぅ、おはよう…』

「どうしたの?」

『実は………』


優しく聞いてくれる春菜に、全てを話そうとした途端チャイムが鳴り、話が中断されてしまった。


うー、この不幸な私の出来事を早く聞いて欲しいのにっ。


神様とは意地悪なもので。

なんだかんだとゆっくり話す時間が取れず春菜とすれ違ってしまっているうちに、昼休みになった。




『春菜、ご飯食べよー?』

「うんっ」


机をくっつけようとした時、一気に教室内がざわつき始めた。

同時に、廊下から春菜を呼ぶ声。



「あれ、精ちゃん?」

『精ちゃん?』


そう呼ばれた人は教室に入ってきて、春菜の元にやってくる。



「やあ、春菜。今日は昼休みに、土曜日の練習試合についてレギュラー全員で話し合うって言ったの忘れたの?」

「あっ!そういえば…」

「春菜らしいなぁ。じゃあ行くよ」

「あ、ちょっと待って!今日はもう未央とお昼食べる約束しちゃって…」

「未央?…あぁ、君が中津川さん?」

『は、はぁ…』



教室に入ってきた時から綺麗な人だなぁって思ってたけど、間近で見ると益々綺麗な人だ。

…でも、よく見たら男子の制服を着てるのですぐに目を逸らす。



「未央も一緒に連れて行っちゃダメかな?」

『い…いやいや!私はいいよっ。部活の話でしょ?私のことは気にしないで!』


だって、この人さっき"レギュラー全員"って言った。

春菜は男子テニス部のマネージャー。
ということは、間違いなくレギュラーは男なわけで…。

そんな所でお昼を食べるなんて、考えただけで恐ろしい!




「うーん……まぁ、いいよ。中津川さんも連れて来て」

「本当!?」

『やっ、私は本当に……!』

「俺がいいって言ってるんだ。…行くよね?」



…あれ。
昨日の美代子さんみたいなオーラが漂っている。




『……行き、ます…』


なんか寒いよ、ここだけ。









連れて来られたのは屋上。

いわゆる屋上庭園があって、普通なら殺風景な屋上も色鮮やかな植物がその場を潤している。





「あ、来た来た!春菜せんぱーいっ」


奥のベンチに何人か既に集まっていて。
その内の一人が春菜の名前を叫ぶ。

あわわわわ、男がいっぱいいる…っ。





「お待たせー」

「やはり昼休みの件を忘れていたのだな」

「ごめんごめん」

「んー?幸村くんの後ろにいるの誰……………あ、」



その声の主を見ると。
なんともまぁ…、唯一私が顔と名前を覚えている人ではないか。




『…あぁー!変態っ!!』

「おまっ、人の顔見るなり変態はないだろぃ!」

「なんじゃ、ブンちゃん。どこまでヤッたんじゃ?」

「仁王くんっ!」

「ま、丸井!貴様、まさかこの女子に破廉恥なことをっ……!」

「だぁーっ!仁王!誤解を招くようなこと言うなっ」

「落ち着けって、ブン太」



…これだから男は嫌だ。
ヤッたのヤらないだの、すぐそういう話に発展するから。

あの銀髪の人、私の中の最低ランクに入るぞ。




「っていうか、ブンちゃん未央と知り合いなのっ?」

「い、いや…知り合いっつーか……」

『……』



言うな言うな!
そう念を込めて小刻みに首を横に振る。





「…中津川未央、二年E組。身長158cm、体重47kg。よく春菜が話している例の友人。男嫌いで有名な女子だ」

『…、は?』

「家庭の事情で最近、妹と二人で知り合いの家に居候し…」

『ちょ、ちょっと待った!!』



なんなの、この人!?
人の身長体重から最近のことまでっ!

っていうか、体重は言っちゃダメでしょ!!






「ふふ、柳は参謀と呼ばれる程のデータマンだからね」



いえ、これプライバシーの侵害レベルですからっ!




  


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