私、男嫌いですが?







……私の家はごくごく普通の一般家庭だったはず。

いつからそんな、どこかのお金持ちのような家の風習ができたのか?





『…わんもあぷりーず?』

「ママ達、おじいちゃんおばあちゃんの所に行かなくちゃいけなくなったから」

『違うっ、その後!』

「だから、未央と美羽(みう)は許婚の丸井さん家でお世話になってね」



What?

い い な ず け ?




『あの、許婚って……誰の?』

「誰って…未央しかいないでしょ?」

『…………はぁあ〜〜!?』





――これが、一ヶ月前のある夏の出来事でした。











***



「…お姉ちゃん、大丈夫?」

『だ、大丈夫大丈夫!』


妹・美羽の手前そうは言ったものの、全く大丈夫な状況ではなかった。




田舎のおじいちゃんがギックリ腰になって畑仕事ができなくなり、パパとママは当分田舎に行くことになった。

「あんた達は田舎行くの嫌でしょ?」と言われて、確かに嫌だと思った。
だからと言って、他人の家に預けるのはどうかと思う。

それに許婚ってなんだ。

そもそも私は、…………。








――ドンッ




「あ、すいません」

『……ひっ!?』


大学生ぐらいの男の人にぶつかられ、ピキッと体が固まる。

相手の人は不審な目で私を見てから歩いていってしまった。




「お姉ちゃんお姉ちゃん!もう行っちゃったよ?」

『………っ、はぁはぁ!!』


い、息をするの忘れてた!

慌てて酸素を吸い込む。





――そう。

何を隠そう、私は男の人が苦手なのだ。(別に隠してないけど)
ていうか、嫌いだ!!

小さい頃のある出来事がきっかけで、同年代の男の人がダメになってしまった。



そんな私に許婚?

はっ、ママも大概ふざけている。

私のこれを知っておきながら、何でこんな嫌がらせみたいなことをするのか、と聞いたら。




「だってー、許婚のこと決めたの、まだ未央にその症状が出る前だったんだもん」

と可愛く舌をペロッとされながら言われた。


ママには丸井美代子さんという親友がいて、学生時代、「お互い男の子と女の子が生まれたら結婚させよーね」と約束していたらしい。

あーそっか、いいねそういうの。じゃあしょうがないか………………なーんて言うと思ったら大間違いだ!!!


断固反対してやる!と意気込んで、引っ越しの今日を迎えたのだけれど…。






「…お姉ちゃん、ここ北口って書いてあるよ〜?」

『あれっ、おっかしいなぁ…?』



ママの親友の美代子さんが駅に迎えに来てくれるらしいんだけど、その待ち合わせの南口に辿り着けない。
北口なんて南口の反対じゃないか。


それからしばらく構内をうろうろして、ようやく南口に到着するとママから言われていた特徴を探し、美代子さんらしき人を発見した。





『…あのー、丸井美代子さん、ですか?』

「あっ、もしかしてあなた達が未央ちゃんと美羽ちゃん?」

『あ、そうです』

「きゃー!美波の学生時代にそっくりねっ、二人とも可愛いわぁ!」


美波はママの名前だ。
きゃっきゃっ、と私たちを見てはしゃぐ美代子さん。

なんだか可愛い人だなぁ…。
美代子さんを見ながらホッとする自分がいた。






だけど、この日を境に私の人生は大きく狂わされ、嵐の幕開けとなることをまだ私は知らなかった――…




  


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