初心者ですから![]() 「……薄っっ!!」 ブン太の大き過ぎる声に、他校の選手の数人が何事かという感じでこちらに視線が集まる。 やめてよ、バカブン太。 アンタのせいで男が何人かこっち見てるじゃんか! …そんな私の心の声なんか露しらず、立海テニス部の人達はギャーギャーと文句たれている。 それはそれはもう、失礼なぐらいに。 「甘党のブン太じゃねーが、確かに味がしねぇ…」 「これじゃただの水だろぃっ」 「中津川さん、君ドリンクも満足に作れないの?」 『……』 …なんでこんなに責められなくちゃいけないんだ。 そもそも作り方も知らない私にいきなりドリンクを作れだなんて、博打もいいとこだと思うのは私だけだろうか。 私は悪くない…はずだよね? 「中津川、お前はどうやってドリンクを作った?」 『ど、どどうって…!袋の後ろに書いてある通り!!……だともったいないから少し少なめに……」 「「……」」 最後の方は消えるように話す私に対し、それを聞いていた周りのテニス部は何故かシーンと静まり返る。 『………な、なによ!?』 「いや、中津川って案外、節約家…なんだな」 「ジャッカル、こういうのは節約とは言わないぞ」 「柳先輩の言う通りっス!ただ単に、レズ先輩はケチなんスよ」 『んなっ!?』 とりあえずツッコミどころ満載なんですけど!! 調子に乗りやがって…このクルクルモジャ公めっ! 「くくっ、お前さんレズだったんか?」 『違うし!』 「け、けしからん!」 『ひぃっ、!?』 「じょ、女性同士など…!俺は認めん!」 『いいいえっ、だから私はレズじゃっ…!』 なんで私が怒られなくちゃなんないのだろうか…。 かと言って、じゃあ男が好きなのかと聞かれたらそれはそれで困る。 だって男嫌いだし、想像するだけで……。 うぅっ、ゾワゾワしてきた! 「おい未央!」 『!?な、なによバカブン太』 さっきのこと根に持ってるんだから! 「バッ!?……ったく、俺がドリンクの作り方教えてやるよぃ」 『えっ…?』 思わず自分の耳を疑った。 だって、あのブン太が私にドリンクの作り方を…? 『え、なに本気で?』 「おう!マジマジ」 「…やめといた方がいいぜ、中津川」 「なんだよぃ、ジャッカル」 「ブン太が教えるドリンクなんて、かなり甘いのに決まってる」 「確かに!丸井先輩好みの甘いドリンクなんか飲まされたら、俺ら全員丸井先輩みたいになっちゃうッスよ!」 「おーい赤也くん、どういう意味だー?」 「そのまんまの意味ッスよ!ブタになっちゃ………、あ」 「あーかーやーー!!」 「い、嫌だな〜…ほんの冗談じゃないッスか、ねぇ丸井先輩?」 ……が。 そんなクルクルモジャ公の言葉も虚しく、ブン太とそれに便乗した仁王くんから逃げ回った挙句、ボッコボッコになって戻ってきた。 理由は、部活中なのに騒ぎまくって真田くんの鉄拳をくらったから。 あ、それは赤と銀色頭も同じことだけど。 *** 『う、うーわー…痛そう〜』 「いっ、!?おい未央、もっと優しく出来ねーわけ?」 『う゛っ…。だって、っこここここれ以上近付いたら……』 「近付いたら?」 『…………吐く』 「…はぁ!?ちょ、マジそれだけは止めろぃ!」 『だ、だからこれで我慢してっ!』 バチーンと冷えピタを真田くんに叩かれた頬に貼り付ける。 同様にクルクルモジャ公と仁王くんにもしたら、ギャンギャン犬のように責められた。 (主にクルクル…) いやいや。 必要以上に触れない為であって、決して怪我を悪化させようとしたわけじゃないのよ。 なのに…。 『……なんでこんなに責められなきゃいけないのっ!』(←本日2回目) 「お前のせいだからだろぃ!」 「お前さんのせいだからじゃ!」 「アンタのせいだからッスよ!」 ……まぁ、少しは私も悪かったし謝っとくか。 "ごめんなさい" そう心の中で呟きながら、さらに赤く腫れ上がった三人の頬をチラ見しつつ、私は両手を合わせておいた。 「ふふ、俺の存在忘れて楽しそうだね四人とも」 『…あ、なんか背筋ゾクゾクしてきた』 |