オアシスは一瞬で、







『えっと、朋香ちゃんと桜乃ちゃん…でいいかな?』

「はい!私達も未央先輩って呼んでいいですか?」

『いいよー!』



自己紹介の後、そのまま食堂で昼食をとることになった。
トレイにおかずが盛られたお皿を乗せながら、青学のお手伝いで来ている小坂田朋香ちゃんと竜崎桜乃ちゃんに話しかけると二人とも元気良く返してくれた。

はぁ〜、やっぱり女の子がいるだけで安心する!




「は、春菜先輩もお久しぶりです」

「久しぶりー、二人も来てたなんてびっくりだよ」

「だって、リョーマ様もこの合宿に参加するって聞きましたから!」

「ふふっ、相変わらず越前くん贔屓だね」



みんな知り合いなのか。

…そういえば、春菜は中学の頃もテニス部のマネージャーしてたって言ってたもんね。
私は高校からの外部入学だからよくわかんないけど。

朋香ちゃん達は中学3年で、特別にこの合宿に参加しているらしい。
他にも全国大会が終わったから、と中学生で参加している選手がいるとかいないとか…。




「あ、未央いた!」

『え……』

「どこに行こうとしてんだよっ、お前はこっちだろぃ」


さりげなく立海から離れた場所に座ろうとしてたのバレてたのか!?




『ぅあっ…お、押さないで…!』

「あ、じゃあ私達こっちだからまた後でね?」

「はーい!」

「あっ…今日からよろしくお願いしますっ」

『いやだぁ〜〜〜…!!』



両手がトレイで塞がっているから背中を押すブン太に逆らえず、流されるまま桜朋コンビ(桜乃ちゃんと朋香ちゃん)から引き離された。


うぅ、春菜以外に見つけた私の癒しだったのにぃっ。


結局、立海メンバーが勢揃いするテーブルまで連れて来られ、美味しいはずのご飯なのに美味しく食べられなかった。






昼食後、あの偉そうな俺様男が前に出てこれからのスケジュールなどを話している。



「さっきも言ったが、正式なマネージャーは立海の長友だけだ。よって、テメーら4人には一日毎に担当校をローテーションでサポートしてもらう」

『……』



きっと、こういうタイプの男が私は一番苦手なのかも…怖いし。

バチッと目が合い慌てて顔を逸らすと、チッという舌打ちが聞こえた気がした。


怖い!怖いよお母さーんっ!




「とりあえず今日の担当は今から言う通りだ――…」












***


『……なんでこんなことに………、っうわ!?』

「文句言うなよー、他の学校だったら知らない男に囲まれて仕事しなきゃいけないんだぜぃ?」

『や、それはごもっともなんだけど……、いたたっ!髪!引っ張ってるからっ!!』



ガシガシと頭を撫でるブン太。

あまりに乱暴にするから、指に髪の毛が引っ掛かって私にとってはこの上なく痛い。

悪いと思っていない謝罪の言葉って、軽い殺意しか湧かないって知ってるかいブン太。




「俺のせっかくの気遣いが嫌だって言うのかい?中津川さん」


スーッと汗が引いていくのと同時に、いつの間にか背後にいた幸村くん。

気遣いって…何の話?



「よくわからない、という顔だな」

『どっ、どういう意味なの?や、やや柳くん…』

「今日、お前が立海の担当になったのは精一が跡部に頼んだから、ということだ」

「男性が苦手な中津川さんに、いきなり他校での仕事はあまりにも酷ですからね」

『ゆ…ゆゆゆ幸村くんが?』



わ、私の為にわざわざ掛け合ってくれたってこと?
少しでも知ってる人がいる立海で仕事できるように?

…なんてこった。
男のくせに、魔王のように怖いくせに、綺麗な顔だけど男のくせに(強制終了)

そんな幸村くんが私の為に動いてくれただなんて、ちょっぴり見直し……




「マネージャード素人を他校に行かせて立海の恥を曝したくない、って言っとったぜよ」

「…ふふ、だって本当のことだろう?」

『…っやっぱり男なんか嫌いだ!!』



少しでも見直そうとした自分を殴りたいっ。






「ほら、もう練習始まるよ。早くドリンク作ってこないと真田の制裁喰らうことになるけど」

『ぅええーーっ!?』



ねぇ…ちょっと待ってください。



私、マネージャーの仕事内容とか何一つ教えてもらってませんが?




……私のオアシスはどこにいってしまったのだろうか。





  


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